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zoom RSS ガチな専門書だが示唆に富む、「初期メソポタミア史の研究」

<<   作成日時 : 2017/12/13 00:10   >>

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年表で一纏めにされた挙句、シュメール史の本でさえ解説すっ飛ばされることの多い「紀元前3,000年紀」の南メソポタミアに絞って書かれた本。何も考えずに手にとったが、実はこれガチめの専門書でちょっと難しいやつだった(笑) ほかの本の年表などと見比べながら読まないと判りづらいかも。ただ、ガチなだけあって示唆に富む本だった。

初期メソポタミア史の研究 (早稲田大学学術叢書)
早稲田大学出版部
前田 徹

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この年表でいう「初期王朝」とひとまとめにされてるあたりがメイン。

画像



シュメール、アッカド、アッシリア、バビロニアの違い
http://55096962.at.webry.info/201506/article_12.html


初期王朝〜アッカドのあたりって、どの本読んでもいまいち詳しく書かれていなかったので研究が進んでいないのかと思ったら違った。研究してる人が限られるだけなんだ。巻末の参考論文一覧を見ると、外国語文献ですら限られた著者名しか出てこない。そして日本語論文で最近出たものはほぼ著者のものだけで、紙面が同じ名前で埋め尽くされているという…。

うん、まあ、確かにニッチなジャンルではある。

本の構成としては、シュメールにおける国家の成立・発展の流れを時代と共に章立てて解説していくようになっている。

第一章 都市国家の誕生
第二章 領邦都市国家
第三章 領域国家期
第四章 統一国家形成期の領邦都市国家
第五章 統一国家確立期・ウル第三王朝

(以下は周辺地域についての章)

文明の誕生時には、もちろん「国」という概念も仕組みも無い。まず集落が出来、村が町になり、都市になる。そして都市を中心として「都市国家」が誕生する。

ここまではすぐ判るだろうが、「領邦都市国家」は普段あまり聞かないのですぐには分からないかもしれない。本では、「近隣の都市を服属されせることで地域統合を果たした有力な都市国家」と定義されている。つまり、都市国家の一形態で、多くの都市が成立したのちそれらの中でぬきんでて有力になった都市、のことだ。

歴史の教科書なんかにたまに出てくる「ウル」とか「ウンマ」とか「ラガシュ」とかいう都市名は、この段階でぬきんでていた、いわゆる Capital city のこと。逆に言うと、知られているこれらの都市以外にも、小さな無名の都市はたくさんあったということだ。
この段階では、国というのは都市の集合体である。また、国は領域のことではなく都市どうしの同盟を指す。

続く領域国家の時代には「国土」の概念が生まれ、王の称号が「国土の王」となる。現代に近い国境の概念も発生し、「国土内」と「国土外」の対比が作られる。外にいる周辺部族は蛮族扱いである。

そしてさらに「国土」の統一が目指される時代に入るのが第四章以降。ここからは近代の国家や王の概念に近いのでわかりやすい。

これら、統一国家成立に至るまでの時代ごとの特徴を、王の名乗る称号や、都市国家のあり方などから丁寧に詳しく解説してくれている。
都市国家が成立する前に初期王朝の時代で一気に全土統一をキメてしまい、紀元前3,000年には既に「国土」という概念の下で動いていたエジプトと、メソポタミアの違いも面白い。


あと、研究してる人にとっては当たり前なのかもしれないが意外と言われないと考えないことが書かれているのが面白かった。たとえば、初期に登場する「アッカド」という言葉はアッカド市のことしか指しておらず、アッカド語を話す人全体=アッカド人、という現代でいうような概念はまだ無かったという話など。シュメールという言葉も、シュメール人というよりはシュメールの諸都市、といった地域をターゲットにした単語として登場するのが最初らしい。

シュメールといえばシュメール人、という概念だったのだが、考えてみると、自分たちの自称なんて他人の存在があって初めて名乗るものである。(そうでなければ「人間」という普遍的な単語でいい) 最初は地名だったものがいつしか民族名/人種名になっていったのなら、そのきっかけもまた興味深い。


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