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zoom RSS アンデス文明展図録めも/現在のアンデス地域の考古学

<<   作成日時 : 2017/10/31 00:10   >>

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上野で開催中の古代アンデス文明展の図録、めっちゃ丁寧に解説が入っててボリュームたっぷりだったので読むのに時間がかかった。
日本語のアンデス文明本があんまり出てない現状、この図録は最新の研究内容を盛り込んだ良質な参考書になっている。カラー写真もたっぷり使われているしお値段的にはかなりお得。

で、せっかく読んだので気になったところをメモしておこうと思う。

■人類の南米への移住

かつては、氷河期の終わりに氷河の衰退とともに人が移動していった、という説が有力だったが、その後、氷河が後退する以前の遺跡が出てくるようになり、現在では、氷河期が終わる前に海岸沿いに舟で移住していた人々がいたという説のほうが主流説となっている。氷河期から海岸部には人がいて、氷河期の終わりとともに内陸部にも広がっていくようになった、という拡散モデルだ。

画像


しかし、この移住が1回だったのか複数回だったのかがはっきりしていない。
特に南米は、遺伝的な差異が少ないにも関わらず、言語学や民俗学の観点で見ると地域差が非常に大きいという。かつては遺伝的な多様性もありつつ歴史期に入る以前のどこかで均一化してしまったのか、それとも元々、時代を隔てて複数回に分けて人が移住してきたのか、今もよく分かっていないという。これは、最近流行のDNA解析を取り入れたら話がよけいこんがらがった例になるだろうか。何か主流説くらいはあるのかと思ったら「どれもイマイチ…」という感じでいまだに収集がついていないというのは意外。

この辺りの話は日本の研究者の出した本にも少し書かれていたが、今後の動向が楽しみなトピックである。
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■アンデスの人々の動物性タンパク源

アンデスでたくさん飼われているリャマ、てっきりヒツジやヤギみたいな利用方法なのかと思ってたら肉は普通あんまり食べないらしいと知ってびっくりした。というのも理由が「増えにくい」かららしく、妊娠期間が360日もあるのだそうだ。ほぼ一年! そりゃ食肉利用は無理だ…。かわりにクイ(テンジクネズミ)が、たくさん増えるからと食肉利用されていて、現代のペルー人はなんと年間6500万匹のクイを消費している、という研究があるそうだ。ろくせんごひゃくまん。ああ、どおりでどこの都市に行ってもネズミ飼ってる人いるわけだよ…と納得。アンデスの食卓にはネズミの丸焼きが必須ということか。

あと野菜としては最古の栽培植物がカボチャ。その他マメ、キヌア。おジャガは品種改良されるのがわりと後世で、トウモロコシは高地向きではないので栽培できる場所が限られるという。


■ナスカ文化崩壊のシナリオがいつの間にかほぼ確定されてた

最近パルパで行われた調査で、「地上絵の側に小さな神殿があった」まで特定されていたらしく、前々から言われてた、地上絵は儀式用の図だっていう説がほぼ確定したってことなのかな。もう「謎の地上絵」と呼ばせないぞ的な。

ナスカ文化衰退までのシナリオがかなりはっきり描かれていて、気候変動による雨量の変化と人口の増減が原因ということらしい。

・ナスカ前期
気候良好、後90年〜後90年ごろにナスカの人口最大

・ナスカ中期
乾燥化、後325年〜440年ごろ 耕作不能で一部人口が高地へ移動開始

・ナスカ後期
乾燥化がより深刻に、後440年〜650年ごろ 谷の下流集落が放棄される
地上絵と小神殿の数が増えはじめ、雨乞いの儀式が盛んになったと考えられる
が、雨が降らないのでナスカ地域は放棄され人口は高地へ移動する

 ↓ ↓

高地でワリ文化が発展(後650年〜1000年)

↓ ↓

その後、インカ帝国の基盤になる


時代と文化と、人の移動がようやく繋がったぞ!!
なお、ナスカ地域に再び雨が戻ってきたのはワリ文化も衰退した後1200年ごろかららしい。ナスカがいったん放棄されてから600年も経過しているので、そりゃあまあ、地上絵のこととか忘れられてても仕方ないと思う。


あとこまい話も色々あるが、順次拾っていこうと思う。

今までバラバラに記憶していたアンデス地域の古代文化が、少しずつ繋がって流れになっていくのが楽しい。そして、かつて「謎」という言葉で誤魔化して、何も知らないのに理解された気になっていたものが、研究の蓄積によって実体を得て、現実世界の存在として存在感を主張してくるようになっているのもまた楽しい。

アンデスに生きた人々の文化は、約1万5千年前に最初の移住者がその地を踏んでから連綿と受け継がれ築き上げられてきた、紛れもない「人間の」文明だと実感できる。




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