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zoom RSS トインビーと文明論、40年前の「常識」とは…。

<<   作成日時 : 2017/10/29 00:10   >>

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古本屋の300円棚になんか妙にきれいな本があったのでテキトーに手にとってみた。アーノルド・トインビーの生涯と研究の集大成、という感じの本。

たぶん↓これ。
人類の知的遺産〈74〉トインビー (1978年)
講談社
山本 新

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トインビーというと、代表作は「歴史の研究」だと思う。世界の文明をグループ分けして、その発展などについて論じた大著で、ちょっと難しいがなかなか面白い。実に手広く、いろんな文明を的確に描写している。今でいうところの「比較文明論」のさきがけみたいな本で、ものすごく膨大な知識が盛り込まれているので、自分の専門ジャンルで部分的に越えることは出来ても、全体を通して上回るのは難しいと思われる。
つまりトインビーは前世紀の「知の巨人」の一人なわけだ。

歴史の研究 1
社会思想社
トインビー

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…で、そんな人の研究の概要本が今回手にとったもので、出たのが昭和53年だからほぼ40年前の本である。

なんとはなしにぱらりと読み始めてすぐに気が付いたのが、本の中で「ご存知のとおり〜」といった語り口で語られる内容が全部ふるい。当たり前なんだけど(笑) ものすごいジャネレーションギャップを感じるんである。

そもそも40年前ってどんな時代かというと、まだ米ソ冷戦やってるし中国はバリバリの共産主義国だし、ベルリンの壁もまだあるし、あとインターネットないしデジカメないから写真は全部ネガだし、人類が月面着陸してからまだ10年くらいの時期でチェルノブイリ事故は起きてなくて、EUがまだ前身のECなわけですよ。全然世界が違うわけですよ…。

なので、「これから世界はナショナリズムを脱却し世界国家の時代に向かうだろう」とか書かれてても、「ああ…それ20世紀の最後の最後でムリなの判っちゃったから…」って遠い目になっちゃう。
かつてトインビーの「ナイルとニジェールの間に」を読んだ時、そこに書かれていた未来予想が今となってはほぼ全てハズレていることに悲しみを覚えたように、この本でもやはり、未来予想がハズレていることに切なくなった。

ナショナリズムを捨てると、人類は民族主義に戻る。決して「世界国家」は作られない。
これが、20世紀の最後に起きたボスニア紛争、および21世紀の最初に起きているヨーロッパ各地の独立・EU離脱問題の示す答えである。トインビーは間違いなく知の巨人ではあったが、それでも文明の行く末を予測するには不向きな人であった。

中国が西洋的な工業主義とは異なる進化をするはず、という予想も外れていて、現在の中国は西洋を追いかけ、かつ帝国主義に走ろうとしているので残念ながらトインビーの望んだ方向には行ってないように見える。


この本が褒めている「トインビーのすごいところ」というのが、そもそも、あまりにも古いのだ。
ヨーロッパ至上主義から抜け出して、世界の文明を同列に扱った先駆者であるから素晴らしいという。2017年に生きているこっちからすると、「えっいや、そんなん当たり前じゃねーの…」ってなる。いまどき、ギリシャ文明が世界最高の文明! ヨーロッパえらい! アフリカは土人の国! とか言ってる人がいたら、肩ポンして「もうちょっと勉強しようぜ…」ってなると思う。

でもトインビーの生きていた時代のヨーロッパは、それが普通だったという。

前提として、彼が日本で有名になったキッカケというのが、かつて中国とごっちゃにされるのが当たり前だった日本文化を一つの独立した「文明」と認識してくれたヨーロッパ人だったから、というところにあるようなのだ。そこも時代によるギャップを感じさせる要因となっている。「歴史の研究」では、日本と朝鮮は中国文明の衛星文明という扱いになっている。現代の感覚だと、まあ普通だよねって思うのだが、当時はものすごく新しい考え方だったらしい。

今でこそ当たり前と思える考えが、半世紀前だと斬新で議論を呼ぶ考え方だった、という事実。内容以前にまずそこが衝撃的だった。たまに古本をあさって昔の本を掘り出してくると、思いもよらなかった視点が出てくるから面白い。
つまり今の我々からすると基礎の基礎であり出発点である視点が、トインビーの時代には斬新で最先端な、知の巨人が苦労して到達した概念だったということだ。



この本から学ぶことは、本の内容自体よりも、『数十年経つと常識なんてガラリと変わる。立ち止まるな。置いて行かれるぞ』ということだと思った。
半世紀前の学者たちの「最先端」を、我々は第一歩として、無意識に苦なく踏み出すことが出来る。


死んだ人間はそれ以上先には歩いていけない。
あとから生まれた人は、先に生まれた人よりも必ず先に行ける。というか、先へ行くことが後から生まれた人間の役目だと思っている。

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