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zoom RSS 旧約聖書と絡む考古学の現在/聖書の世界を発掘する

<<   作成日時 : 2017/10/01 00:10   >>

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家のポストに本が届いてて、どうやら自分が取り寄せ発注したっぽいのだけれどいつ買ったのか全然思い出せない…ちょっと前に読んだ聖書考古学からの続きだろうか…

まあたまにそういうこともあるので、とりあえず読んでみた。
出版社はあんまり聞いたことのないところだが、編集が「上智大学キリスト教文化研究所」となっているだけあって無難でお堅い内容。読みやすい構成でなかなか面白かった。

聖書の世界を発掘する―聖書考古学の現在
リトン

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構成は以下。有名どころのよく名前みる先生がそろっている。
月本先生のだけ「です・ます」調で書かれてて前後通しで読むとちょっと違和感あり。あとシャニダールの話は情報が古いかなと…。

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まえがき(竹内修一)

1.考古資料を通して垣間見た旧約聖書の時代(津本英利)
 →全体概要、交易網や鉄器の利用など

2.油滴る地(小野塚拓造)
 →オリーブの利用を通して見る旧約聖書の時代、オリーブ油生産法の変化

3.祭儀台からのぞく聖書時代の宗教生活(山吉智久)
 →日本隊が発掘しているテル・レヘシュ遺跡から出土した祭儀台とそこで使われただろう香について

4.旧約聖書にみる埋葬習慣と他界観(月本昭男)
 →聖書の時代からの埋葬方法について、ちょっと内容が古いところあり

5.文献学と考古学(長谷川修一)
 →旧約聖書を歴史資料として使う場合の注意点など、古代史研究の手法について

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この本は考古学から見た旧約聖書の時代の話であり、物証があるかとか、モノから見るとこう見えるとかいう話をしている。神話の話は出てこない。ここ10年くらいに出た論文も資料として取り込まれているので、おおむね最新情報と考えていいと思う。

読んでて面白かったのが、最初の「考古学資料を通して垣間見た旧約聖書の時代」。紀元前1,200年ごろに東地中海全体で大きな変化があり、鉄器の利用が始まる。考古学としてもそこから「鉄器時代」と分類されるのだが、その原因がヒッタイト帝国の崩壊により鉄器製作の技術が流出したからだという説を述べたのは、どうやらチャイルドだったらしい。
またチャイルドかよ! あんたかい! みたいな気分になった(笑

いやー、、西アジアっていうか古代オリエントの「過去の定説」って、高確率でチャイルドに行き着くんですよねー…
まああの「過去の」ってつけてるのでお察しいただけますとおり今はその説は「詳しく調べてみたら違ってた」ってことになってるわけですが。

紀元前1,200年ごろに鉄器の使用が広まったのは事実。しかし、ヒッタイトが崩壊して技術が流出したならばアナトリアからじょじょに鉄器の使用が広まっていかなければならないところ、鉄器の出土の多い地域はキプロスやパレスチナの近辺である。
出土状況の図もこの本に載ってたが、アナトリアではほとんど発掘されておらず、グルジア、キプロス、パレスチナ、イラン…と見事に「周辺」地域に散っている。

以前、イラン高原から見つかっているバイメタル(鉄と銅を組み合わせたもの)についての記事を書いたが、やはり鉄の扱いに関する技術の伝播ルートは、ヒッタイトありきではなく、別ルートも想定したほうがいいように思われる。ていうか紀元前1,200年以前に既に鉄器の量産体制はヒッタイトの外で整えられていて、それが原因でヒッタイトが滅亡した、というようなシナリオも描けそうな気がしてきた。


青銅→鉄器時代への狭間に存在したバイメタル文化と製鉄技術の伝播について
http://55096962.at.webry.info/201708/article_9.html

出土してる鉄器の分布からしても、たぶん「海の民」は鉄製の武器を持っていたと思う。安価に手軽に作れてつぶしも利く鉄を手にした集団が押し寄せてきたからこそ、紀元前1,200年ごろの東地中海に民族大移動の波が起きたのかも。だとすると今まで見えてた世界がほぼ逆転することになり、実に面白いことになる。ヒッタイトが滅ぼされたから鉄器が使われるようになった、のではなく、鉄器が開発されたからヒッタイトが滅ぼされた、と言えるわけなので。

ただし、この波に南メソポタミアはほぼ無関係だし、エジプトも比較的、影響は受けていない。
というかエジプトはその後も延々青銅武器を使い続けるので、実は鉄器時代に入るのは西アジアという枠で見るとかなり遅い組だったりする。

参考文献とか細かい話は、各章の最後にリストがあるのでそこから辿れるハズ。

***

余談だが、4番目の記事に出てきたシャニダール遺跡の「ネアンデルタール人が手向けた花」については、最近では異論のほうが定説になっているようだ。

死者に供えられた花という幻想: 「花を手向けられし旧人の墓」イラク・シャニダール遺跡の現在
http://55096962.at.webry.info/201602/article_25.html

あとダビデの実在に関しても、1993年発見のテル・ダン・ステラをどう解釈するかに因るかな、とか。

テル・ダン・ステラとダビデの実在の研究
http://55096962.at.webry.info/201510/article_6.html

エジプトから出て、隣の地域の歴史もだんだんと繋がってきたぞぅ。
面白いじゃないか旧約聖書の世界。

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