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zoom RSS ヘレニズムの本当の立役者はローマだった「アレクサンドロスの征服と神話」

<<   作成日時 : 2017/07/02 00:10   >>

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文庫化されたお陰で、興亡の世界史シリーズのまだ買ってなかった巻が手に入りやすくなった。しかも文庫化の際に訂正や追加が入っている場合があり、この巻も2014年に発見された「オリュンピアスの墓かもしれない」という遺跡の情報が追加されている。本を出して満足、ではなく、情報を更新しながら新情報も伝えてくれる著者はいい著者。内容的には好みが分かれそうだけど自分は面白かった。

興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話 (講談社学術文庫)
講談社
2016-02-26
森谷公俊

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アレクサンドロスは、世界史の中では知名度Sクラスの超有名人なので日本語でもたくさんの本が出ている。ちょうど今、「ヒストリエ」という人気のマンガが連載されていることもあり、新しい本も何冊か出ている。ひとりの人物に対してそんなに本出してもしょうがないじゃんと言いたくもなるが、面白いことにこの人物に対しては切り口によって全く異なる絵が描けてしまうのだ。

「アレクサンドロス自信の残したものは少ない」「彼の名を後世に残したのは後継者たちの業績」、これはたとえばイエス・キリストと同じ構図だろう。本人が残したものは少なく裏づけが取れない状態で、それぞれの後継者たちが残した異なるアレクサンドロス像と矛盾した記録を解釈しなければならない。そのために、どう解釈し、どの記録を採用するかによってストーリーが異なってくる。

今回の本の著者で面白かったのは、「アレクサンドロスの東方融和策は明らかに失敗している。」という立場に立っていたことだ。

アレクサンドロスの東方遠征と支配については、本の中で触れられているNHKの番組を含め、「王宮炎上―アレクサンドロス大王とペルセポリス」あたりの本も、わりと好意的な書き方をしていたと思う。ペルシャ人やアジア人も平等に側近に取り立てたとか、現地の風習を重んじてギリシャ文化と融和させようとしたとか。


だがこの本は、「それは表面だけで、実際はアレクサンドロスも周りのマケドニア人も本当の意味では東方の文化を理解していなかったし、融和政策は失敗だった」としている。そして、本当の意味で東方文化とギリシャ文化を融和させたのは、ギリシャ文化の後継となるローマだったとしている。

(※ちなみに本の中で"マケドニア人"と"ギリシャ人"は区別されている。最近のトレンドかもしれないが、マケドニアはギリシャ文化をとり入れてギリシャ化した"ギリシャの辺境の新参国"という扱い。ギリシャ寄りの学者やギリシャ人は反発するだろうが、事実はそれに近いと思う)

読みながら成程と思うところは多かった。そして、アレクサンドロスのしたことはダイナミックな"世界の撹乱"であり、やられる側からしたら"破壊行為"であったというのも確かにそうだと思った。ギリシャ文化をそれなりに理解していたエジプトあたりまでは良かったんだと思う。エジプトは自ら門を開け放ってペルシア支配よりマケドニア支配のほうを選んだ。が、そこより地理的に遠い異文化圏の征服は、最初からむりだったんだろう。
あとから歴史を見返してみると、結局アレクサンドロスの後継者の中で最後まで繁栄を保って生き残れたのはエジプトだったわけだし…。

アレクサンドロスは現実的な政治家ではなく、夢想家であり、理想主義者であり、著者の書くように「リーダーとして戴きたくないタイプの人物」なのは間違いない。英雄を必要とする国家は悲劇なのだ。

人気の人物なので、今後も色んな本は出ると思う。
それぞれの本によって切り口が異なるだろう。だが、個々の人物は描けても、「アレクサンドロスの生きていた時代」という、時代の空気を描いてくれる本はそんなに多くない。

****

本の冒頭に出てくるとおり、ギリシャ(バルカン)は土地が貧しく、アレクサンドロス登場前の時代だと傭兵で出稼ぎやってたりする貧乏な文化圏である。文化的に高水準だったのは、むしろ現トルコのギリシャ人入植地のほう。エジプトは出稼ぎ労働者駐留地を建設していたくらいで、かなりの数が国外に出て働いていた。そして、ギリシャ文化は、東地中海全体で見ると、後発の未熟な文化だった。高度で洗練されたイメージは、ギリシャ文化を取り込んだ後継のローマが昇華させ、世界のスタンダードとして広めた結果だ。

という話を昔書いたら、何故かめちゃくちゃ怒られたのだが(笑)

「偉大なる」ギリシャの没落? 過去のギリシャさんは過大評価されすぎだと思う
http://55096962.at.webry.info/201207/article_28.html

古典ギリシャも、エジプトやメソポタミアが数千年前に通過した道を後追いでなぞった二次文化だし、ローマが出てこなければ辺境の一文化で終わっていただろうと思われる。

いや、異論があるのは判ってますが。

「東方宥和政策は失敗してて、持ち込まれたギリシャ文化は根付くことがなかった」
「ガンダーラ美術を生み出したものも東方遠征でもたらされたギリシャ文化じゃない」

というこの本の中の話にも繋がるので、まずは読んでから話そうか…。

****

・最近出たアレクサンドロス関係の本

「ヒストリエ」と併せて読むと面白い。「アレクサンドロスとオリュンピアス」
http://55096962.at.webry.info/201210/article_27.html

アレクサンドロスは何故ペルセポリスを焼いたのか? 「王宮炎上」
http://55096962.at.webry.info/201207/article_1.html

・あとおまけでトルコで見てきたやつ

イスタンブール:国立考古学博物館 アレキサンダーの棺とシドンの出土品
http://55096962.at.webry.info/201208/article_17.html

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