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zoom RSS 現代農業×中米古代文明崩壊/塩害がもたらす文明衰退ストーリーを考える

<<   作成日時 : 2017/07/13 00:10   >>

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J-STAGEでこそこそ調べものをしていたら出てきたこの報告書。目を通していて何かに気づいてしまったのでとりあえずメモしておく。

中南米の土壌保全と天水農業開発
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsidre1965/66/8/66_8_829/_pdf

土地の不適切な農業利用によって侵食が起きている、という内容なのだが、対象地域と侵食度合いの図を見て何か気づかないだろうか…そう、これ、マヤやアステカなどのメジャーな中米文明が発達した地域と一致しているのだ。

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*文明マップの赤枠の部分

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重ね合わせてみると、パレンケからサン・ロレンソあたりが「激ヤバ」地域、トルテカからチチェン・イッツアなどのあたりは「深刻」「被害甚大」な地域。こうなった主な原因は、急勾配の山肌に無理やり畑を作って土が流れてしまったこと、塩分濃度の高い水を使ってしまい長年の間に塩害が進んだことなど。
メキシコを中心として行われている農業はそう特殊なものではなく、古代から現代までの間で劇的な変化があったとも思われない。いま起きている問題は、程度は違えど古代人も体験しているのではないだろうか。

マヤ文明衰退の原因が農業や集住による「環境破壊」だという説は昔からあったが、その内容の重要なヒントになる可能性がある。


…と、いうわけで「現代農業×中米古代文明崩壊」で少しまとめてみた。


【前提知識】
農業の実態は、大規模な自然破壊である。基本的に農耕は土地を痛め、力を奪う。ひどい場合は、塩害化によって二度と植物の育たない不毛の地に変えてしまうこともある。


なんで塩害化がおきるの? については、以下に以前調べた記事があるが…

人類の農耕の歴史は常に塩との戦いだった。…日本以外。
http://55096962.at.webry.info/201512/article_6.html


わかりやすくいうと、土地の中にはどこにでも塩がある。その塩が土の表面に集結してしまうと塩害となる。

森であれば、木々の根や堆積物が水を保つので土中の塩は表面に出てこない。また単純に乾いた土地も、土中の塩は動かない。しかし畑を作るために土地を切り開いて保湿力がなくなり、どんどん水が蒸発するようになると、水に溶けた塩分も土の表面に上がってくることになる。また乾いた土地に畑を作って水をかけると、土中にしみこんだ水が塩を溶かし込み、表面に塩分が上がってきてしまう。

森林に覆われたマヤ地域では、都市文明が進むにつれ森を切り開いて畑に変えていった。雨量が多ければ土表に上がってきた塩は押し下げられるが、雨量が少ない時期が続けば必ず塩害は発生したと思われる。またメキシコの例のように、そもそも農業に塩分の含まれる水を使ってしまった場合は、雨量が多くても土の中の塩分が増え続けるのでアウト。

人類は農耕を手に入れたことによって文明を築きイージーモードになったように思われているが、実は農耕とは時限爆弾仕込みの恐ろしい技術であり、巧く使わないと地域ごと滅びてしまう。その意味では原発その他の最近の技術と何も変わらない。

冒頭のPDFに書かれているメキシコの例では以下のように書かれていた。


塩害発生の原因は,大部分は排水施設のない農地に水質の悪い潅漑用水をかけることにある。このような潅漑により,地下水から土壌表面までが毛細管でつながり,水と塩が土壌表層に供給され,水はそこで蒸発し可溶性塩類が集積する。
この他,そもそも塩分濃度の高い水を汲み上げて使用したり,排水に必要な勾配を土分確保できないために排水障害をおこし,その結果,塩類集積を起こしたり,海岸線では,心土の水分消失が海水の進入を促し,塩類化をもたらす場合もある。このように塩類化した土壌はNaが主要因となっており,リチングによりある程度回復できる可能性がある。メキシコの各農林牧試験場における土壌改良プログラムは,実験的には多数の好結果をみているが,高コストのため実施されることはなかなか困難であるのが現状である。



「毛細血管で繋がり…」と言われているのがなんのこっちゃよくわからんと思うので図で補足すると、こうなる。

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で、

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こう。
そしていちど塩害化してしまった土地を農耕に適した土地に戻すには高コストがかかりなかなか巧くいっていない。



しかし面白いことに、土地を塩害化させず、灌漑も行わない、一見して原始的な農法に見えるもので塩害化や土壌の侵食を防ぐ方法がある。それがこの報告書で報告されている内容だ。やり方は

 ・土を掘り起こして撹乱しない →土壌流出防止・労働力削減
 ・土の中に水をためる層をつくり天水をうまく使う →塩分の多い水を使わない

というもの。

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自然に近い農法、と言うと語弊があるが、要は灌漑に適さない土地で無理して灌漑はせずに、天水を有効利用しましょう、というところだろうか。生産性などの問題で必ずしもうまくいくとは限らないようだが、土地が使えなくなるのが見えているような方法はもはや使えないのは確かだろう。地上の土地には限りがあり、ひとたび使えなくなってしまうと再生にはコストと時間がかかる。多少効率を落としてでも、持続可能な土地利用が求められる時代なのは間違いない。

というわけで、「場所によっては灌漑を続けると土地がヤバい」「作物的にも条件的にも、中米はむしろ天水農業向き」。これを念頭において、マヤの本で農業についての記述箇所を確認してみると、面白いことが見えてくる。

マヤ地域では大規模な灌漑が行われていた証拠はあまり無いらしいのだが、旱魃時に急激に衰退してるのはティカルやセイバルなど王権主導で灌漑を行っていた都市が多いように思う。もちろんこれは、元々の人口規模が大きくて食料生産が落ちることが死活問題だったこともあるだろう。だが、灌漑農法をとり入れて無理に食糧生産効率を挙げ、土地が本来養いうる人口上限を越えてしまっていた、という見方も出来るかもしれない。

現代と同じ条件で灌漑農法をやっていたのなら、古代世界においても塩害や土壌浸食は起きていたはずだ。
それもまた、都市文明衰退の一つの理由に数えるべきかもしれない。

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