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zoom RSS 「農場主はビール醸造に失敗したら国外追放な」ヴァイキング時代のビール醸造と焼けた石の話

<<   作成日時 : 2017/06/24 00:10   >>

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お仕事タノシイデェス(死んだ眼を死ながら) …ウフフ…ボーナスマダカナァ…

というわけでアイスランドに辿り着けず難破しそうな小船の上でゲロっている時に見つけたのがこの記事。
「ヴァイキング時代のノルウェーでのビール醸造には石が使われていた」「ビール醸造はとても大事なものだった」というもの。

Brewing Viking beer ― with stones
https://archaeologynewsnetwork.blogspot.jp/2017/06/brewing-viking-beer-with-stones.html

ノルウェー中央部の24の農場を調査したところ、後期鉄器時代(A.D.600〜)くらいから、1,500年くらいまでの長期に渡る焼けて割れた石の山が見つかったという話で、この石は、現地の農民に聞いて見ると「むかしビール作るのに使ってた」という回答だったというのだ。

なんで石を使うのかという話は記事内には詳しくは書かれていないが、ここで古代エジプトビールの製法について調べたときに得た知識を投入して補足してみる。

古代エジプトのビール検証(3) 古代エジプトのビールについての基礎知識
http://55096962.at.webry.info/200808/article_24.html

ヴァイキング時代のビールはエール・ビール。すなわち、現在出回っているビールに使われているラガー酵母に比べて活動温度が高く、13度から38度くらいの温度帯で発酵する酵母が使用されている。よいビールを造ろうとすると18度から24度くらいが適温。けれど北欧の平均気温は夏でも15度とかなので、常温だと低すぎるのである。そう、だから焼けた石をぶち込んで強制的に温度を上げなくてはならない!

そして、素の気温が高すぎるのでそのままでは発酵が続いてしまうエジプトと違い、ノルウェーの気温では発酵が終わって液体が冷めると、発酵を止められて保存が利くのである。

画像
*写真の中に骨とか混じっているが、ゴミ捨て場だから。いわばこれは、日本でいう「貝塚」にあたる遺跡。石ばっかりだけど。



農場には、夥しい数の熱で割れた石が積み重なっていたという。ずっと昔からビールを作り続けてきた証拠だ。その石が使われなくなるA.D.1,500年というのは、おそらく鉄なべが導入されて石を入れなくても高温が保てるようになった頃だろうと記事では推測されている。

面白いのは、農場でのビール生産は法律で決められていたというところ。
古来より北欧ではビールが重要なものであったが、たとえばヴァイキング時代の法律では、「三年連続でビール醸造に失敗した奴は土地を聖職者と王に捧げて国を出て行け」というものがあるという。しかも、ごく小さな農場の農場主を除けば、この法律の罰則からは逃れられない、とも。

"For example, the Gulating, a Norwegian parliamentary assembly that met from 900 to 1300 AD, regulated even the smallest details of beer brewing and drinking at that time.

The Gulating’s laws required three farmers to work together to brew beer, which then had to be blessed. An individual who failed to brew beer for three consecutive years had to give half his farm to the bishop and the other half to the King and then leave the country. Only very small farms were exempt from this strict regulation."


Gulating というのは、ノルウェー史上初の法律である。(ヴァイキング本などでは「グラーシング法」または「グラシング法」というカナ表記で出てくる。ちなみにアイスランド最初の成文法は「グラーガース」。)

ヴァイキングが、自国にいるときは農場を経営していた、というのは、最近連載しているマンガ「ヴィンランド・サガ」なんかでも扱われている内容なので、昔よりは知名度が上がっているかもしれない。ヴァイキング=船主は、財産として土地を持つのが基本である。だからここで述べられている「ファーマー」は、ヴァイキング時代ならヴァイキング行に出られる自由民たちのことを指している。その自由民たちに土地を置いて出ていけ、というのは、二度と戻ってくんな級の国外追放を意味する。めっちゃくちゃ厳しい刑罰なのだ。

ただビール作れなかっただけなのに… ビールめっちゃ大事やったんやなノルウェー…。(´・ω・`)



なお、グラシング法は900年から1300年くらいまで有効で、それ以降はフロストゥシング法(Frostathing)という法律に変わる。そちらの新しい法律にもビールに関する内容が色々出てきて面白い。たとえばこんなの。

"北ノルウェーの「フロストゥシング法」第一章の三条は、フロストゥシング集会における酔っ払い規制である。そこでは「エールは売るため、その他のために持ち込まれてはならない」と規定されている。この条項は大司教エイスティンのイニシアティヴで定められたことが明記されている。(中略)したがって12世紀中ごろまでのノルウェーでは、立法・司法の集会は飲酒の機会でもあり、エールの販売もなされていたのである。

「ヴァイキングの歴史 実力と友情の社会」創元社"




国会でビール飲んで大騒ぎするヴァイキング気質な連中を前に大司教様激怒のシーンを思い浮かべて苦笑してしまう。うんまあ、気持ちはわかる。


というわけで、農場から出土する大量の焼かれた石たちは、かつて「グラシング法」によって「ビール醸造するか、国外追放か」を迫られていた農場主たちの、わりと必死なノルマ達成のための家庭内醸造の痕跡であったのだ。派手な発見ではないが、昔の人々の生活の物語が見えてくる面白い遺物だと言えるだろう。



***
おまけ

現代のおみやげヴァイキング・ビール。


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