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zoom RSS ナショジオ3月号ユピック特集→ユピック=アラスカのエスキモーのことってのが書かれてないような…

<<   作成日時 : 2017/04/05 00:10   >>

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「アラスカの先住民ユピック」と書かれていたけれど、これたぶん気がつかない人もいるんじゃないかな? と思ったので、少し補足を入れてみたいと思う。

ナショジオ3月号「解け出した氷の下の記憶」。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/magazine/17/032100008/032100004/


ユピックまたはユッピックを自称するエスキモーは、アラスカにのみ分布している。
同じエスキモーに分類される人たちの中でも、自称する名前は様々だ。「エスキモーは差別語だからダメ、イヌイットが正解」などと言う人もいるが、それは単に現状を知らないで言葉狩りしてるだけである。

--- 分布図 ---
学術としてのエスキモー研究 極北の文化誌
http://55096962.at.webry.info/201311/article_16.html


画像

--------------


もう一冊、「イヌイット―「極北の狩猟民」のいま (中公新書)」という参考書もある。
http://55096962.at.webry.info/201312/article_1.html

これらを総合すると、語族的に「エスキモー」と分類される極北の民族の"自称"は、以下のようになる。

 ・カナダに住むエスキモーの多く →「イヌイット」
 ・カナダ西部の一部 → 「イヌヴィアルイット」
 ・グリーンランド → 「カラーリット」
 ・ロシアのチェコト半島とアラスカ中西部〜南西部 → 「ユピート」(複数形がユッピック)
 ・アラスカ北西岸 → 「イヌピアート」(複数形がイヌピアック)

カナダ以外の地域に住む人々の自称の中にイヌイットという言葉はなく、そう呼ばれることも好まない。むしろ自分たちで「ユッピック・エスキモー」といった名乗りを使う。エスキモー全部を、一番よく研究されているカナダ・エスキモーの自称で全体を呼ぶのは、彼らに対してはむしろ失礼にあたる。(ジプシーを全部ロマと呼び変えるのと同じ種類の失礼だろう。)

というわけで、「ユピック」というのはロシアに近いアラスカに住むエスキモーのことなのだ、というのが前提知識となる。彼らはカナダのエスキモーに比べると研究が始まった時期が遅く、資料も比較的少なめだ。しかし日本人の研究者がいるので、日本語の書籍や論文は発掘できる。見た目も近いので現地民に溶け込みやすく、馴れてくると現地の人と間違われるそうだ。(笑)


今回のナショジオの特集は、永久凍土が後退して昔の遺跡が出てきているという話と、ユピックの社会に訪れている変化の話であった。正直ありふれたテーマであり、メッセージ性も薄いな、と思った。写真は相変わらずきれいだけども。
そこで敢えて、記事の中に「書けなかった」であろう話に突っ込んでみたいと思う。

"なぜイヌイットはアザラシを捕らないのか。ガソリンが購入できないからだ。なぜ、ガソリンが購入できないのか。それはアザラシの毛皮が売れないからだ。なぜ売れないのか。それはヨーロッパの市場で需要がなくなったからだ。ではなぜ需要がなくなったのか。それは、ヨーロッパ共同体が1983年にアザラシの毛皮の輸入を全面的に禁止したからだ。ではなぜ輸入を禁止したのか。それは、アザラシをはじめとする毛皮獣の捕殺に反対する欧米の動物愛護団体による運動が、財界や政界を動かしたからだ。

イヌイット―「極北の狩猟民」のいま"



エスキモーたちはもはや犬ぞりと銛で狩りはしていない。スノーモービルに乗ってライフル持って、あるいはモーターボートで狩りに出る。その狩りのためにガソリンや銃弾を買わなくてはならない。現金収入が必要なのである。だが、現金収入をもたらすはずだったアザラシやイルカの狩りは、外野の政治によって奪われている。

これはイヌイットの話だが、グリーンランドのカラーリットたちにもアザラシや鯨を狩るなという圧力はかかっているし、ユピックたちも同様だ。ナショジオはぶっちゃけ、彼らの「伝統」を奪う側の立場の社会に属している。


欧米社会の善悪というのは、見方によっては非常に偏ったものである。遊びでライオンやゾウを狩って剥製を飾って楽しむようなスポーツ・ハンティングは止められないくせに、食料として鯨やイルカを狩る先住民の生活にはケチをつける。そして彼らの伝統や文化が失われつつあることを嘆いてみたり、保護しようとしてみたりする。矛盾している。はっきり書くとその矛盾があらわになるから、この記事はこれ以上ツッコんで書けないんだと思う。

先住民の土地から資源が出た場合の国の政策についても語られていない。永久凍土が溶けて遺跡が出るということは、その土地に資源が見つかった場合は簡単に利用できるということも意味する。先住民に生活保護を与えて定住させ、かわりにかつて彼らの狩場だった場所で石油を掘り出せばお得である。アラスカでもカナダでも実際にそのような政策が行われている。ユピックたちの遺跡がさらされている危険は、気候変動と海面上昇だけではない、ということだ。



何かが悪いとか間違ってるとかいう話ではないが、先住民の生活を都合にあわせて変えさせてきた当事者側の人間が書くにしてはこの記事ちょっと薄すぎませんかねぇ、という話。いろいろ他人事すぎるっていうかね。
うちらも鯨は食うな! とか圧力かけられてる側なので余計にそう思うのかもしれないですが。


ちなみにエスキモーは、いわゆるインディオと呼ばれてる人たちとは全然系統が違う。(言語学的にも、DNA的にも)
北アメリカの先住民だからといって全部インディオではない、ということ。エスキモーたちは先住民の中でも後から渡っていった人たちになる。そんなこんなで、アメリカ大陸への人類の移住が一度ではなかったことは確実なのだが、どのような経路で、何回に分けて移住していったのかは今のところ良く分かっていない。そのへんも興味があったら本を探してみると面白いよ!

#例によって芋づる式に色々繋がります。

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