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zoom RSS 今年も紛れ込んできた。第24回西アジア発掘報告会(その2)

<<   作成日時 : 2017/03/30 00:10   >>

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というわけでエジプト分まとめー

[>プログラム一覧とかはこちら
http://aom-tokyo.com/event/170325.html


**** ここからエジプトの部 ******


●テーベ、アル=コーカ地区の岩窟墓調査

今年新しく見つかった、書記コンスの墓を含むテーベ西岸の貴族たちの墓の発掘。
すでに知られている墓をクリーニングして再調査するだけのつもりだったのが、その墓の周囲から未発見だった墓がぽこぽこ出てきてやることがどんどん増えてるという話(笑) 地域的に、お墓がたくさん集まってる人気の分譲地区なので…。

見つかったばかりのコンスの墓についてはまだあまり判っていないようで、今回は今までのおさらいと、どこまで進んだかの話がメイン。遺物がいくつか見つかっているパヘカエムサセンという人物の墓はまだ見つかっていないが、おそらく近くにあるはずだとのことで、やることはまだまだ増えそうな雰囲気だった。「今年は授業はサボる」宣言をされていたので、えー、生徒の皆さんは自主学習の準備を…。(笑)

ただ、「発掘の許可が下りるか微妙」という不穏な情報も出ていた。
どうやらエジプトさん、クーデーター以降の政情不安と相次ぐテロでだいぶピリピリしているらしく、発掘隊の入国にもかなり慎重なのだそうだ。発掘隊メンバーの出入国を厳しくするあまり許可の処理が滞っており、有名どころの発掘隊の中にも今年は発掘許可が出ないままだったところもあるとか。SNSで愚痴ってた学者さんいたけど、なんか理由が判ってしまったぞ。

あと去年は飛行機が爆弾で落とされたってこともあって、流石に今はエジプト航空も機内持ち込み物の検査が厳しいらしい。(今までがゆるすぎたんだけどね…) どうなることやら。


なおここの隊の発掘報告書はWeb上のPDFでも追えるようになっている。
(一覧ページ)http://www.egyptpro.sci.waseda.ac.jp/publication%20eji.html

今回発表で使われていたのは、「第22号」のPDFに入っている図なので、同じものが見たければ以下のリンクからドゾ
http://www.egyptpro.sci.waseda.ac.jp/pdf%20files/JES22/10_Khokha8.pdf




●アブシールのピラミッドにおける三次元計測調査

発掘調査というより現状の記録に焦点を当てた発表。資料内容からして名古屋の発表会と発表内容だいたい同じなのかな? ピラミッドの3D画像をどのように作るか、という話。
今まで考古学者の先生たちはデータをとるときに「データとってください」と丸投げしてて、それだと効率悪いし取ったデータが細かすぎてノートPCでぐりぐり動かすとかが出来ない、って話になって、「適度に解像度を低くして、最初から撮影ポイントも決めて計測しよう」と検討した結果、手法が最適化されてきました。という内容だった。

これは業界のスタンダードを決める作業だな、と思った。ドローンやUAVを使った空撮も最近出てきた手法だけど、遺跡の3D映像化も今までどうやったらいいかの方法がきちんと考案されてなかったんだな…

自分も仕事で似たような場面に出くわすことはある。
お客さんから「自社のセキュリティを高めたいです、でもどうやって高めたらいいかよくわかんないのです」みたいなカンジで相談を受けるんだけど、何をどう規制したらいいかとか、どのくらいのセキュリティレベルにしたいかとか具体的な話は全然出てこないの。今は標準パッケージソフトがあって、ガイドラインも作られてて、「良く使われる規制の組み合わせはこれとこれです」「セキュリティレベル高・中・低のセットがあります」というカンジで選択肢を提示して、あとちょっとカスタマイズするだけで大体いけるんで楽になったけど、そういう「基準」のなかった時代はほんと一つ一つ擦り合わせて決めていかなきゃならなくて大変だった。

一度パッケージを作っちゃえばあとは楽なんだよね。標準化の作業はどんなジャンルでも通る道。ここから新しい手法が生み出されていくんだろうなーと思いながら聞いていた。

なお、この発表でも計測器の持ち込みに苦労した話とか、エジプト政府からの許可が下りなくて苦労した話は出てました…。ドローンの国外からの持ち込みが出来なくて、現地で飛ばすのに現地の会社探さないといけなったとか聞いて、なるほどテロ警戒してるとそうなるのかーとか思ったり。



●アコリス遺跡の調査

散々「地味な現場だ」と謙遜されてましたが大丈夫ですよアコリス遺跡の発掘を10年くらいウォッチしてる物好きいますよ。あとアコリスの石切り場の情報を元ネタに入れて作られたエジプトRPGとかありますよ! 自信持って!

中部エジプトの遺跡で、時代的に第三中間期からプトレマイオス王朝くらいの間に一般人が暮らしていた場所の発掘調査。一般人の町で、しかも末期王朝以降なので金銀財宝は出てこないしラメセスとかの有名なファラオの名前も出てこないのだが、採石場の近くに作られた町っていうところがポイント。なにしろエジプトの大規模建造物ってぜんぶ石だから。ここの近くの採石場って今も石灰岩掘り出すのに使われてるんだよね。GoogleEarthで白く見えてるとこは現代でも採石してるとこだって聞いてなるほど! ってなった。

画像



それと最近見つかった(実は見えてはいた)切り出してる最中で放置されてるオベリスク。
http://www.sankei.com/photo/daily/news/160211/dly1602110011-n1.html

画像


途中で放置されたオベリスクだとアスワンのものが有名だけど、こんなとこにもあったんだなぁと。
石灰岩は柔らかいので、ぶじ完成していたとしたら果たして現代まで残っていたかは怪しいけれど、アコリスに人が住んでいたエジプト王国の歴史の最後の方でも、オベリスクの作り方が継承されていて作り続けられていた、というのは興味深い。


なお、この遺跡についての調査の本は最近出た。ちょい納得いかないところもあるけれど、とても勉強になる本なので興味のある人は。

ナイル世界のヘレニズム―エジプトとギリシアの遭遇―
名古屋大学出版会
周藤 芳幸

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●エジプト西方デルタ・イドゥク湖

ここも地味な地域といえばそうなのだが、古代エジプトの都市の形成を知る上では非常に興味深い発表。

アレキサンドリアとメンフィスの中間にかつて存在した巨大な湖とそれを取り囲む丘陵地帯の村落についての研究。イドゥク湖いがいの大きな湖は、上流で灌漑を行うためにナイルの水量が減ったり、ナイルの流れが変わったりで、今は縮小してしまっているか消えてしまっているものもある。この湖は、海と繋がっていて海側と川側で塩分濃度が違い、魚の種類なども違っていたはずだという。

ナイルデルタの一部とはいえ川沿いの豊かな土地とは違い、砂漠の周辺部に位置し、しかもかつては海だったため塩分濃度が高く農業が行えない土地で、どちらかというと貧しいはずの地域なのだが、大都市であり新興の首都であるアレキサンドリアが、エジプトの伝統的な首都であるメンフィスを遠隔から支配するための中間地点にあたる、という。水路・河川は古代の幹線道路のようなものなので、それで考えると確かに中間ではある。アレキサンドリア・メンティスが「首都」級の都市だとすると、その一つ下の段階がダマンフールのような「州都」級の都市。その下に存在するのがイドゥク湖付近にあるような村落なのではないか、と。

実はこの集落の連結構造、こないだ読んでいたインダス文明の都市の成立の本にも出てきていたんだ。
http://55096962.at.webry.info/201702/article_15.html

都市は、都市を支える中規模の町と村落がある中で成立する、と。前からエジプト末期の都市(主にギリシャ人入植地とか)とインダス文明の都市は似てるなー、と思っていたので、何か見えそうな気がちょっとした。

それ以外にも、エジプトの農村といえば農業メインのところが多い中で、明らかに農業では食べていけない場所に作られている村落の生活を再現しているという点でも、この研究は面白い。果樹園や漁業、あと製造業なんかを組み合わせての生活。穀物は買ってこないとダメなわけだが、それで食っていけたってことは余剰作物がコンスタントに売買される市場システムが出来ていたってことなんだろうな。

古代エジプトって、かなり後のほうの時代まで物々交換しかないんですよ。コイン使わないの。プトレマイオス朝になるとさすがにコインも使われはし始めるんだけどそれは都市部だけで、農村はほとんど何ソレ状態。なので、アレキサンドリアに近いこの地域の農村の物流にいつから貨幣が使われだしたか調べてみるのも面白そうだなぁ。




…調べることがまた増えたぞ。(´・ω・`)


****************

というわけでエジプト分まとめおわりー。
次回は初日分の前半をまとめようと思う…が自分のよく知らないジャンルなのでとりあえず調べながらぼちぼちいきま!


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<その他おまけメモ>

・発表会が雨の日だったので花粉症の先生がすごくサワヤカな顔をしていた
・子供たちのイベントとカチあっておりチビッコたちの群れに巻き込まれる事案
・エジプト組がエジプトアクセをこっそりつけてきていたの気づいてます。気づいてますよぼくは
・春の別の発表会で白髪だった先生が真っ黒になっていた…白髪染めかな…

今回は初日がメインっていうか、初日のほうが人多かったですね。シリアから遺跡の被害状況を発表しにくる予定だった先生は諸事情により来日できずビデオメッセージのみ。





あと前々から言ってるのだけれど、テレビに出てる先生の出てくる発表会で、その先生のところだけ居て直ぐに姿を消す人たちは、ぶっちゃけエジプトのことにも古代史にも興味ないし勉強する気もないと思う。単にテレビタレントとしてその先生を消費しようとしているだけ。
発表内容に興味あるなら絶対前後の話も聞くでしょ。聞かない理由がない。わざわざ会場まで来てて、どこからどこまで聞くのかは個人の自由なのに。エジプトの部のさいごまで聞くことすらしないんだよ(笑)

彼らに対して訴えかけるのは時間の無駄だし、彼ら目線での要求に応えようとすればするほど、「本来の」ファンも同業者も遠ざかっていくような気がする。せっかく研究内容はまともなのにイメージで敬遠されるのは勿体無いと思うんですけどね?

まぁ私はもうあのミーハー連中がめんどくさいんで、その先生がメインの講演会は行かないつもりなんですけども…。

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