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zoom RSS なんでも鑑定団の曜変天目茶碗と真贋論争

<<   作成日時 : 2017/02/20 00:10   >>

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年末になんでも鑑定団で流れた「四点目の完璧な曜変天目茶碗発見!」というニュースのその後が面白いことになっていた。(関係者にとっては面白いどころではないだろうが…)

曜変天目茶碗というのは、天目茶碗の中でも星の煌きのような不思議な光彩を持つ茶碗である。作り方は既に失われてしまっている(或いは偶然でしか作れない)ため、同じレベルのものは現代ではもはや作れないという。ある意味オーパーツである。

本場・中国では失われてしまい、現存する完璧なものはすべて日本にある。中国人でも意外と、曜変天目なるものを知らない人はいるらしい。これについては中国人が日本語で書いた面白いレポートもある。

国宝茶碗に見える日本文化の矛盾と相克
http://202.231.40.34/jpub/pdf/js/IN4501.pdf

"したがって、窯変はどんなに素晴らしく見えても、窯から出るなりに砕かれる運命にあった。その変化が素晴らしければ素晴らしいほど、妖気だと見られ、恐れられたのである。
天目茶碗の窯変になると、いっそう怪しまれたと思われる。それは、黒という色のためである。五行説の中で、黒は北方、水を代表し、死後の世界につながる色である。陰陽説の中で、黒は陰である。さらに外見上でも、黒は楽しい色ではない。その上、大小斑点が放つ青白い光も尋常ではない。考えてみれば、現代照明の下でもこうであるから、千年前の陶工の目にはどれほど妖しく映されたことか。だからこそ、世に伝えるのも恐ろしいと思ったのに違いない。"


という考え方には、なるほどと思った。
狙って作ったわけじゃなく偶然出来てしまって、そこに不吉を読み取ったから故意に叩き壊していたのだとしたら、中国で残らず、日本に渡ってきたものだけが辛うじて生き残ったというのは有り得るなぁと。

あとこれ書いてる人は中国人なので、「日本と中国は思想が違う」という当たり前のところに引っ掛かりまくっているのも面白い。こっちから見ると、茶の湯の思想が全然違うのとか当たり前じゃん? って感じなのだが、向こうからすると、うちから輸出した文化なんだから似てるはず という前提なんだろうなとか。日本はね、よそから来たもんをなんでも改造する空間だから原型留めてるもののほうが少なくてね…。




話が逸れてしまったが、騒ぎになってしまった「なんでも鑑定団」の話に戻る。
さきに述べたとおり、今回の騒動は鑑定団の番組に持ち込まれた茶碗が「四点目の完璧な曜変天目茶碗発見!」と大々的に宣伝されたにも関わらず、見た目があまりそれっぽくなく、専門家も好事家も疑問を呈していたというところから始まる。

放送は2016/12/20、その時点では好意的な報道が多い。否定的な内容としては、鑑定された値段が安すぎるのでは? というくらいだ。

「鑑定団」、曜変天目茶碗に2500万円 「意外と安い」と思われるワケ
http://www.j-cast.com/2016/12/21286701.html?p=all

画像




しかし、放送直後からネット上では疑問の声が噴出しはじめる。
決定打となったのは、国内で長年、曜変天目の再現を試みている陶芸家がUPした動画だったと思われる。「中国のみやげ物屋に大量に売られているニセモノ」。

偽物?なんでも鑑定団 曜変天目茶碗 長江惣吉
https://www.youtube.com/watch?v=Alv5U05Trng&feature=youtu.be



そして現在はニセモノだと感じる人が増えてきて、こんな報道もされるようになった。

「中国の土産物屋で数千円レベル」なんでも鑑定団国宝級茶碗¢專ョ余波 ネットも過熱「娯楽番組では済まされないぞ」
http://www.sankei.com/west/news/170216/wst1702160005-n1.html

画像




茶器の価値は好きな人が決めるものなんだからニセモノかどうかはどうでもいい、という意見も散見されたのだが、それは援護になっていない。なぜなら、その「好きな人」たちが疑問の声をあげた主体であり、「こんなニセモノが2,500万なわけないだろ」と言っているからである。

また、"天目"茶碗というのは、宋代に作られた釉薬をかけた焼き物のことと定義されているので、現代に作られた茶碗であれば、"天目"ではないので明らかな鑑定ミスとなり、天目茶碗としては偽物となる。

要するに、今回の問題は大して難しくはない。
本当に"天目茶碗"であるのかどうか、作られた時代・場所・製法が特定できれば結論は出る話であり、番組がその説明責任から逃げているから炎上が続いているというだけの話である。そもそも天目茶碗じゃないのなら、曜変云々以前の問題となる。そして、現在のところその可能性が高い。





ただし、もし今回の茶碗が仮に"天目茶碗としては正解"であった場合には、問題が面倒くさくなる。
具体的にいうと、「確かに宋代に焼かれた天目茶碗なのだが、曜変というには出来が悪すぎる」という場合である。

実は絵画で、そのような面倒くさい論争が起きたことがあった。「この絵は確かに本物のゴーギャンっぽいが、ゴーギャンにしては出来が悪すぎるのでおそらく弟子のものだろう」というような…。

時代と製造場所が一致していれば、芸術作品の真贋判定は容易ではない。来歴がはっきりしていればともかく、ぽっと出で来歴が失われてしまっている場合などどうしようもない。巨匠のサインいりの作品であっても出来が悪い場合は、当該巨匠のものではないとされてしまうこともある。真贋の狭間は、実は鑑定人の主観によって決められていることもある。

繰り返すが、なんでも鑑定団の曜変天目の話は、「そもそも天目茶碗じゃないんじゃ?」というところが問題なので、鑑定人の主観以前の話である。しかし世の中には、論争になってなお決着のつかない、成分の解析程度では答えの分からない微妙な逸品というのもある。真贋の狭間は意外と狭い。
そして、偽物だからといって必ずしも価値が無いわけではない、ということも言っておきたい。
最高に出来のいい贋作は、それ自体が真に迫る芸術品なのだから。


***

絵画の真贋の狭間に迫る小説とか。
小説として書かれているので肩肘はらずに読めて、専門家でも迷う真贋判定がどういうものなのか想像がつくと思う。

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