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zoom RSS インダス文明における都市のあり方: 「社会構造と都市の原理」

<<   作成日時 : 2017/02/16 00:10   >>

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以前インダス文明について調べていたとき、「インダスってそもそも、メソポタミアやエジプト式の"文明"、"都市"の定義に当て嵌まってななくね??」と混乱したことがあった。その思索の残骸の一部が↓だ。

「文明」の定義とは何か。〜「インダス文明」が、いわゆる「文明」の定義に当てはまらない件
http://55096962.at.webry.info/201408/article_13.html

で、それについて丁度良さそうな本が出ていたので、早速読んでみた。

インダス文明の社会構造と都市の原理
同成社
小茄子川 歩

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この本は、分類でいうとたぶん専門書、インダス文明の概説本ではない。
なので、初心者向けの本を一冊読んで、まず「インダス文明とはどういうものか」の下地を理解したうえで読み始めるといいと思う。オススメは、このあたり

インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す (学術選書)
京都大学学術出版会
長田 俊樹

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重要ポイントは以下の3つ。

 ・インダス文明の都市は「ハラッパー」と「モヘンジョダロ」だけではない
  大都市としては5つ。ほかに遺跡の数は山ほどある、ただし発掘されてない

 ・インダス文明は大河文明ではない
  川の流れが現代と古代では異なり、遺跡は川沿いに位置していない

 ・王や権力者はおらず社会階層も見えない


これらは最近になって大きく書き換わっている部分だが、たぶん、今から何十年か前に義務教育が終わったような人たちだと知らないままだと思う。



上記の基本情報の中に出てこない、今回の本で追加される重要事項が以下。


 ・インダス文明の都市は、すべてが村落から拡大・成長して都市化したものではなく、意図的に、最初から都市として作られたものがある

 ・その一つがモヘンジョダロ、遺跡を構成する1/3が宿泊施設と思われる建物

 ・インダス文明の実体は、元々異なる文化を持っていた広範囲な集落群が、共通するルールと中心となる市場(都市)を運営するようになった経済・物流システムであり、領域国家ではない


つまり、「インダス文明は大規模な都市やシステマチックな物流機能があるのに社会階層も権力・宗教の中心もない」ってのは、そういうことなのだ。"中心から発展した"文明じゃなくて、"周辺が中心を作り出した"文明だったから。
だから、その中心は、歴史も特定の民族的なバックボーンも持たない。周辺の色んな文化・民族が寄り集まって新しく作り出したものであり、都市に歴史はなく、特定の支配民族はない。ハラッパーの文化が共通して使われていたようだが、だからといってハラッパー出身者がそこの王だったとかいうわけではない。

これは、従来の、というか有名な"メソポタミア式"や"エジプト式"の「文明」や「都市」のあり方だけ見ていたのでは理解出来ない図式だと思う。独自色が強くて面白い。インダス文明の担い手は、○○人 というような民族名で語ることは出来ず、使っていた言語どころか見た目すら、今のインドと同じようにバラバラであった可能性もある。この図式からいくと、インダス文明の衰退は、単に市場経済の衰退に伴う中心の喪失であり、特定の民族が別の部族に追い出されたとか、国が滅ぼされたとかいうことは意味しない。「都市が生まれたからといって必ずしも国家になるとは限らない」というのは大事なポイント。

このインダス文明の都市のあり方は、中世の北ヨーロッパ(ハンザ同盟とか)の都市と似ているなぁと思った。
北方の都市も、物流拠点として人為的に、港や街道からのアクセスのよい場所に作られていた。昔からのとりでを流用していることはあるが、全く新規に新しく作られることもあった。そして交易路の衰退や商材の変化によって必要なくなれば、都市機能を失って没落することもあった。

「都市に求めるメインの役割」の中に行政や宗教の中心機能があるか無いかの違い。
メソポタミアやエジプト、マヤなどの都市にはそれがあるが、インダスにはそれが無い。求めるのは物流拠点と、しがらみのない自由な取引の場だ。

都市のあり方については、文化圏ごとに違うと認識する必要があるんだろうな…と思った。


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この本の最初の方に書かれていた、都市の「定義」についての内容は、微妙にしっくりこなかったので今度もうちょっとツッコんで考えてみたいと思う。
著者は「ある程度出揃っている」と書いていたが、正直、「ある程度」の部分が6割程度のような気がしている。都市の条件として挙げられている内容は確かにどの学者も似通っているのだが、かなり大きな違いを含む。そして、実際に存在する都市で見ると、当て嵌まらないものがおおすぎる。

たとえばチャイルドとコニングハムが挙げている「文字」は、インカ帝国には無い。ビータックとコニングハムが挙げている「防御」「周壁」はエジプトやマヤの都市はない。(砂漠や森林を代用にしている、という反論は出来そうだが…) 結局、都市の一般的な定義は出来るけれど、その条件が絶対ではない、という結論に至るのではないかと思う。
その文化圏での相対的な規模や役割の中で、一歩ぬきんでた集落のことを都市と呼ぶ、みたいな。
多分この本のもって行こうとしている結論もそこだと思うんだけど…。


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といえわけで、なかなか読み応えのある本で面白かった。

理解の難しい箇所もあるが、図や表が多めなのでデータを眺めるだけでも色々気がつける。インダスはメソポタミアと連動して発展した文明で、最近は相互の交易の面からも言及されることが増えてきている。何十年か止まっていたジャンルがようやく進み始めた感があり、今後に期待である。

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