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zoom RSS 古代エジプトのファンタジー戦記文学「ヨッパ奪取の物語」

<<   作成日時 : 2017/01/24 00:10   >>

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ヨッパ(Joppa)とは現在でいうとヤッファのこと。古代エジプト文学の一つで、大英博物館が所蔵している写本(パピルス・ハリス:500)が唯一である。「The taking of Joppa」は、トトメス3世の時代の将軍ジェフティ(トト神の名を人物名につけている)によるカナン地方の征服を題材にした物語とされる。

これが歴史的事実に基づく作品なのかどうかは諸説あるが、トトメス3世は実際にシリア・パレスチナ方面への遠征を何度か行っており、エジプト"帝国"とも呼べる版図を築き上げた王なので、実際にヤッフア攻略戦があったとしても特に違和感はない。もっとも、勝利条件に神パゥワーとかが出てくるので、完全な史実では有り得ないのだが。


実物の写真やデータは、以下の大英博物館のページで見られる。
http://www.britishmuseum.org/research/collection_online/collection_object_details.aspx?assetId=20446001&objectId=110336&partId=1

約1.5mとかなりの長さがある写本で、状態はまずまず。
例によって、裕福なイギリス人がエジプトで購入して持って帰り、大英に寄贈したという流れなので、元々どこで発見されたものなのかは不明である。


ストーリーの冒頭部分は失われているが、あらすじは以下のようになっている。

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メンケペルラー(トトメス3世の即位名)の治世、ヤッファの反逆者たちを鎮圧するため将軍ジェフティは軍を率いて現地に向かった。彼はヤッファに使者を送り、ヤッファにいる反逆者(敵の大将)との席をもうける。
ジェフティは兵たちから離れた幕屋の中で宴席を設け、まるで降伏しているかのように見せかける。
しかし二百人の兵士たちは実は荷物の袋の中に隠れていた!

ジェフティは王の杖の神秘的な力でヨッパを討ち反逆者を縛り上げてつるし、反逆者の部下たちに勝利を宣言する。
ジェフティは、ヨッパから王に勝利のメッセージを送る。
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兵士を荷物に隠して輸送するというトロイの木馬っぽいストーリー展開のお陰で、「ホメロスの元ネタの一つ」などと言われることもあるお話だ。けど当時はまだ樽もないし、木箱も使われてないし、籠とか穀物袋とかに入れてたら普通気がつくんじゃねえ? って思うんだけどそこどうやって誤魔化したんだろうかな。この挿絵を見る限り「バレバレすぎるだろ…」って感じになっちゃうんですけども(笑

画像


…このストーリーはなかなか良く出来ていて、「将軍が凄かったんじゃなくてあくまで偉大なる王の力の宿った杖の功績だからね? 凄いの陛下だからね? 陛下万歳」みたいな感じで王を讃えているのが面白い。王より目立つ臣下が物語に出てきてはいけない的な古代エジプト文学の隠されたお約束が見える。


古代ギリシャ文学 → 神の血筋の人間は英雄。すごいこと出来る。
           それ以外の人間は常にチョイ役

古代エジプト文学 → 神の血筋の人間は王。すごいこと出来る。
           それ以外の人間が主人公になるときも王を上位に持ってくること


これがギリシャ・ローマ時代のコプト語で書かれた文学になってくると、英雄イナロス譚などギリシャっぽい英雄物語が出てくるのが面白い変化だと思う。


<ワンポイント>

エジプト本では「トトメス3世」とか「アメンホテプ2世」とか書かれることが一般的だが、それは実は王名ではない。誕生名である。古代エジプトの王は、誕生した際の名前とは別に、即位する際に「即位名」というのを持ち、たとえばトトメス3世なら「メンケペルラー」が王としての呼び名になる。
古代エジプト文学に登場する名前は基本的に即位名であり、「トトメス」など人間としての本名は出てこない。

なお、大抵の翻訳本では面倒なので省かれているが、古代エジプト文学では王の名を呼ぶときは「メンケペルウラー陛下(万歳、陛下! 生きよ、栄えよ、健康なれ)は仰られた」みたいな感じで名前の後に必ず万歳三唱的なの入れないといけなかったりする。

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