現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS IMFから借金のエジプトさん、経済再生への長い困難な道が始まる

<<   作成日時 : 2016/10/22 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

今年の夏、IMFからの多額の借金が決まったエジプトさん。
裕福な湾岸諸国からの多額の融資も暑いエジプトの太陽の下であっという間に溶けてなくなり、さらにおかわりまで貰う模様。借金必ず返してもらうマンのIMFの取立てにエジプトさんがきちんど応じられるのかどうか、中の人ははなはだ心配である…。

IMFと3年間120億ドルの融資で合意
http://www.meij.or.jp/kawara/2016_79.html


というわけで今日は、エジプトさんの現在の経済事情と、どうして経済難に陥っているのかという話をまとめてみたいと思う。ざっくり書くと、

 ・テロで観光客が来ない
 ・アラブの春とかISとかで出稼ぎ先が減った
  →輸出入差の赤字が埋められない!!

という状況が2011年からずっと続いていて、アラブ仲間の湾岸諸国から融資を受けたり、国内の税金を引き上げたりとあれこれやってはみたものの、やっぱりダメなのでIMFからもお金を借りるよ、ということなのだ。

*******

豪華絢爛な宴を催せた、最後の女王クレオパトラ7世の時代ははるか遠く。エジプトは今や、アラブ世界有数の人口を抱えつつ、国内に十分な産業がない、という貧国の国と化している。

外務省のデータだと輸出入は以下のようになっている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/egypt/data.html


8 貿易額

(1)輸出:
220.5億米ドル
(2)輸入:
608.4億米ドル

(出所:2014/15年度エジプト中央銀行)
9 主要貿易品

(1)輸出:
原油,原綿,衣料品等
(2)輸入:
燃料,中間財,原材料等

(出所:2014/15年度エジプト中央銀行)


輸出入の差額が非常に大きいことが判ると思う。そして主要な輸出品が何故か、加工前の原料であることにも気づく。労働力は余っているくらいの国なのだから国内で加工すればもう少し稼げるはずなのに、なぜかそうしないのだ。過去にエジプトに作られた大きな工場は、国王が命じて作らせた国営とか、外資系とかばかりである。

かつて、この輸出入の差額は、観光業とスエズ運河の通行料、そして出稼ぎ労働者からの送金で埋められていた。

特に観光業の比率は大きく、最大の稼ぎを得ていた2010年の時点で出された以下の文書では、GDP比率の11%、105億ドルを稼ぎ出していたと記されている。

http://www.concordjp.com/news/file/20100625.pdf

これが、2013-2014年のデータでは1.8%くらいまで減少している。つまり80%近く減っていることになる。
ちなみに人数だけで見るとあんまり減ってないように見えたりするが、実はエジプトさんの観光客統計はエジプトを経由してアフリカ内部に向かう人(最近は中国人が多いらしい)も集計されている。なので額で見るのが正解だろうと思う。


政変による治安の悪化も理由だが、最も大きな転機は、2015年に発生した、ロシア機が爆弾テロで墜落した事件だろう。ナイル川沿いのカイロやルクソールといった町の治安は悪化しても、海沿いのリゾート地シャルム・エル・シェイクは安全なはず、という幻想は、このとき脆くも崩れ去った。そしてそのあと追い討ちをかけたエジプト航空のハイジャック事件と、同じくエジプト航空MS804便の地中海への墜落。MS804便のほうはまだ原因が特定されていないが、機内で火災発生後に墜落しているため、テロを臭わせる状況である。

現在、海沿いのリゾートはかなり閑散としているという。そりゃあそうである。飛行機落ちるんじゃ気をつけるどころじゃないからね…。



出稼ぎ額は、一時期かなり減っていたものの今はだいぶ戻してきている。

かつてのエジプトは、「最大の輸出品は労働力」と言われたほど、近隣諸国に労働者を提供していた。2013年のエジプトの出稼ぎ額は200億ドル。行き先はリビアやイエメン、ヨルダンなど。しかしお分かりのとおり、これらの国は近年、治安が悪化してている。特にリビアでは、ISがエジプト人労働者を処刑してビデオを上げるという事件が発生し、多くのエジプト人労働者が引き上げてある。

その後、出稼ぎ先を変えて出稼ぎ額が戻ってきてはいるのだが、観光業が減ったぶんの赤字を埋めるには至っていない。ただし、実際は不法滞在で出稼ぎしているケースなども隠れており、全体の把握は困難とされる。もしかしたら実際は目に見える以上の金額になっているかもしれない。

http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/H26_Middle_East_as_Global_Strategic_Challenge/207-shimizu_hosaka.pdf

画像




スエズの通行料に関しては、約50億ドルとなっている。こちらは、よっぽどのことがない限りコンスタントに稼げる部門である。
ただ、近年では通行料を釣り上げ過ぎという声もある。原油安になるとスエズを通行するだけで原価割れになってしまうため、近年ではアフリカを回る船が増えているようだ。つまり手っ取り早く資金を回収しようとして悪手を打ってしまったのである。通行料を増やそうと第二スエズを建設して幅を広げたものの思ったように交通量が増えず、結局借金だけ増えてしまった格好になっている。




以上をまとめてみよう。


外務省データの2014年時点の輸出入の差額は、およそ338億ドルである。
出稼ぎ労働者の稼ぎが200億ドル、観光業で105億ドル、スエズ通行料で50億ドルを得たとすれば、合計355億ドル。黒字になる計算である。
これを観光業を90%減で計算すると87億ドルの赤字。(!)


…エジプトさんが、どうして近年になって急に赤字財政でアワワになったのかお分かりいただけただろうか。
そして、どうして必死に観光客を呼び戻そうとしているかも…。


現在、エジプトは食料ですら輸入に頼っている状況で、輸入額を減らすことが難しい。
国内の治安の悪さを見ていると観光業がすぐに復活するとは思えず、この先は厳しい状況が続くだろう。「そもそも観光業や出稼ぎに頼らずに国内産業を発展させればいいんじゃね?」といいたくなるところだが、まさにそこなのだ。IMFもエジプトに財政の根本的な改革を求めている。

ただしこれは、国民の生活にモロに負担を強いることになる。ギリシャの例を見るまでもなく、今後、エジプトでは大規模なデモや、再びの反政府運動の盛り上がりが予想される。観光業が復活すれば財政赤字は改善するのだが、観光業を復活させるには経済をよくして治安を改善しないといけない、というかなり厳しい状況なのである。


それにしても、かつては周辺のありとあらゆる人種、文化をひきつけ、飲み込んできたエジプトが、二千年を経て今や周辺国に人を送り出す側になっているというのは、なんとも皮肉な感じがする。ナイルの作る豊かな土地が人を引き寄せたなら、ナイルが死につつある今、エジプトという土地から人を引き寄せる魔力も消えつつあるということなのか。

果たして鷹は再び舞い上がることが出来るのか。エジプトさんの、長く困難な現代の「中間期」が始まろうとしている。


*******************
※ここで挙げた数字は、元になる資料によって多少異なる。実はエジプト政府の発表と海外アナリストの発表でだいぶ違ったりするのだが、そういうのは良くあることなので大雑把な目安として考えてもらいたい。

※中の人は経済スキルはR1くらいしかないため、あまり深い考察は出来ない。金利とかVATとか、そういうのは別の人に任せる。

******************

関連

いつか消え行くナイルの挽歌 ― エジプトに行ったら見て欲しいものはナイル川。
http://55096962.at.webry.info/201608/article_18.html

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

IMFから借金のエジプトさん、経済再生への長い困難な道が始まる 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる