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zoom RSS ガウェインさん15歳、こんな時代もあったのね…「ガウェインの成長記」(ラテン語文学)

<<   作成日時 : 2016/08/13 00:10   >>

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へえ、こんな物語あったのかーと思いながら読んでみた。
12世紀頃に書かれたと思しきラテン語の中世文学、「アーサーの甥ガウェインの成長記」、本邦初の全訳版。



これはいいものだ(`・ω・´)

アーサー王伝説の中のひとつのエピソードなのは言うまでもないが、この物語の最高に面白いところはアーサー王伝説だけど時代は明らかに12世紀、十字軍の時代に置かれている、というところ。

アーサー王の物語では、トマス・マロリーによる「アーサー王の死」が有名だが、そっちの物語が書かれたのは15世紀。それまでの間に、大衆小説化したアーサー王伝説には様々な尾ひれがつけられ、新たなエピソードや登場人物が加えられて大幅に変化している。

12世紀、アーサー王文学が量産されはじめる時代の所期に書かれたこの作品は、その大幅な変更・増量の発生する以前の物語の姿を反映していることになる。

大きな違いは以下のようなものだ。

 ・ロット王はオークニー王ではなくノルウェーの王
 ・ロット王と結婚するのはアーサー王の姉アンナ(モルゴースの元の名)
 ・ランスロットはまだキャラクターとして作られていないので王と王妃は普通に仲良し(というか尻に敷かれている(笑))
 ・アーサー王はまだ若く、戦場でバリバリ戦っている
 ・ガウェインも騎士になりたてで若い、女の影があんまりない(!)
 ・アーサー王の宮廷での最高の騎士はガウェイン

これが12世紀のアーサー王伝説なんである。
というかアーサー王が戦場に出なくなったのって、円卓の騎士に色んなキャラクターが詰め込まれて、そっちにスポットライトが当たる時代になってからだからね。元々は「強い英雄王アーサー」が全面に出ていた物語だったはずなのだ。


「アーサーの甥ガウェインの成長記」では、そんなアーサーの配下にガウェインが加わるまでのサクセスストーリーが描かれている。

ガウェインは親元を離れローマ人として成長し、ローマで騎士の叙階を受け、エルサレムでの異教徒との一騎打ちに臨み名を上げるのである。エルサレムがまだキリスト教徒の手にあった時代に書かれた物語なわけで、実に興味深い。敵がギリシャ火を使って攻撃してきたりするあたりも時代を反映している。また巻末の説明を読むに、出てくる装備なども時代に即したリアルなものになっているという。

アーサーと王妃グウィネヴィアや、甥っ子のガウェインとの妙に仲いい会話とかも面白いです。
ガウェインの初々しさとかもね。


アーサー王関連作品の年表はこちら。
http://www.moonover.jp/2goukan/arthur/chronology.htm


「アーサーの甥ガウェインの成長記」が書かれた正確な時代は今のところ不明みたいだけど、たぶん列王史の後くらいだろうと巻末の説明には書かれていた。とすると、マビノギオンと同じくらいの時代。アーサー王伝説に、まだ主要なキャラクターは組み込まれていないことになる。物語中、スコットランドでアーサー王が苦戦しているのも、主要騎士が仲間になる以前の状態だからだと考えると興味深い。



****

この本は本自体の出来も良かった。

ダラダラした前置きもなく本のレイアウトもよく、サイズも手ごろ。それでいて巻末に説明出典はしっかり書いてある。繰り帰し読んでも大丈夫なように表紙の紙も丈夫。ヒモもついてるし、実によくわかってらっしゃる出版社である。値段もこのテの全訳本としては妥当かと。

なんかこう、当たり前のことを当たり前にやってくれると、それだけでほっとするんですよ…ね…。

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