現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS 最近流行りの考古学×遺伝子解析、「情報は常に上書きされる」という話

<<   作成日時 : 2016/06/30 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

ここのところ、考古学とDNA解析を組み合わせた研究がトレンドとなっている。発掘によって発見された古代の動物の遺骸や植物のDNAを解析して、新たな情報を得る、というものだ。

しかし、前回、以下の記事に書いたようにDNA解析には大きな限界がある。


DNA解析の限界/実は単品ではあまり役にたたないという話
http://55096962.at.webry.info/201602/article_3.html


 ・得られた情報を正しい時系列に並べられないと無意味
 ・その時系列の情報はDNA解析からは得られない
 ・なので単品では使えない。考古学や地質学による「年代」の決定が必要不可欠

そしてもう一つ、

 ・古いDNA情報は新しい情報に上書きされて消えてしまう

という、とても重要な点をちょびっと解説しておきたい。
まあ専門家じゃないのでそんなに詳しく解説できるわけではないけれど、基本的な部分だけってことで。



まず、Aという民族集団がいたとする。

たとえば南アメリカに最初に到達した先住民とかを想像してほしい。青い●は遺伝子の型、「ハプログループ」を表している。最初の集団はみんな血縁者なので、似通った遺伝子型をもち、集団内も均一である。

画像


そこに、あとからやってきた集団Bが加わる。Bは全く異なる遺伝子型を持っているのでオレンジで表す。

画像


年月が経ち、青とオレンジの集団は互いに混じりあいながら増えていく。
ところが、あるとき大災害が起きて人口が半減してしまった。
そのとき、たまたま青の集団のほうがたくさん死んでしまったので災害後はオレンジのB集団の比率が上がってしまった。

画像


…さてここで問題だ。
「今」の情報しかなかったとたら、この集団において青とオレンジどちらの系統が古かったといえるだろうか?

実際は青であるにも関わらず、数の多いオレンジのほうが最初からいた人々だと勘違いしないだろうか。あるいは、「青もオレンジも最初からいた集団だ」と考えるかもしれない。少なくとも、オレンジが後から来た少数の移住者であるということは、「今」の情報からでは分からない。


ただし実際は、情報はこれだけではない。
遺伝子は、ある一定の速度で変異する。たとえるならDNAのコピペミスなわけだが、一定の確率で発生するということは、変異の数を調べれば母集団(変異のないオリジナルの状態)が何千年くらい前なのかが分かる、ということになる。

つまりこういうことだ。

画像


青の遺伝子型は、長年のうちに薄い青、水色といったちょっとだけ違う別の遺伝子型を派生させる。派生の数の多さで、元々の青の集団がどのくらい前から存在したか、ある程度推測できるようになる。遺伝子型が多い集団のほうが歴史が古いことになる。

ここに、さっきと同じようにオレンジの移住者が入ってくる。

画像


そしてさっきと同じように災害で半減するが、青の集団には辛うじて複数の遺伝子型が残される。
これにより、「オレンジより青のほうが多様性が多いので青のほうんが古そうだな」という推測が出来るようになる。

画像



たまに遺伝子解析の研究で、「xxと○○は5千万年前くらいに分岐したようだ」みたいな数値が出てくることがあるが、そういう数値は遺伝子の変異する速度から計算して推定していることも多い。

ちなみに現生人類の遺伝子型では、アフリカに住む人々の間の差異が非常に大きくバリエーションに富んでいる。それも人類の起源がアフリカである根拠の一つとなっている。最初から集団のいた起源地ほど遺伝子バリエーションが多いハズだ、という理屈である。

ただし――


画像


こんな感じで、ある遺伝子型の持ち主が根こそぎ居なくなるパターンも考えられる。これだと、その地域にもともと住んでいたのが青の遺伝子型の民族だということは、「今」の住民のDNA解析では全く分からない。

実はこの根こそぎパターンは意外に多い。

人間の場合、ヨーロッパの黒死病のような疫病の蔓延、大津波による地域全滅などの災害、長期旱魃や戦乱による住民の移動などによって人口がガッツリ減り、遺伝子の多様性が根こそぎ失われるケースが考えられる。これが、いわゆる"ボトルネック"現象だ。この現象が起きると、それ以前と以後では遺伝子型の分布が全く違ってしまう。

そこで、古代の資料が重要になってくる。
ボトルネックが起きていたとしても、それ以前の情報を持つサンプルを解析できれば、現在では失われた元々の情報を得られるからだ。

家畜の場合も同様で、たとえば口蹄疫などの疫病の蔓延、あるいは飼育していた民族自体の減少や消滅のあおりを食らうパターンもある。
古い時代に遡ろうとすればするほど、現代の資料からでは分からないことが増えていく。ある資料から遡れる時間は限られている。ならば過ぎ去った時の情報を再構築するには、様々な時代の資料を、より細かく分析していくしかない。


つまり、

 ・遺伝子情報は常に上書きされていく
 ・なので歴史を紐解くためには履歴を追って差分を解析する必要がある
 ・昔の骨を並べて遺伝子解析してたりするのは、各時代の履歴を確認するため

…ということ。

そして、最初に書いたように、遺伝子解析は時系列順に並べないと意味がない。時系列の情報を担当するのが考古学、というわけ。考古学と遺伝子解析を組み合わせた研究はお互い補完しあっているものなのだ。

このへんちょっと頭の片隅に置いておくと、何をやってるのか分かってきて面白くなると思います。逆に、現代のものと2万年前のものだけ調べて「xxが分かった!」みたいにノリノリで発表してきてるのを見て「いやその間の時代抜けてたら意味ねぇだろ…」みたいなツッコミも入れられたりします(笑)

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

最近流行りの考古学×遺伝子解析、「情報は常に上書きされる」という話 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる