現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS 「文字のシルクロード」講演会へ行ってきた。 PART.1 メソポタミア・エジプト編

<<   作成日時 : 2016/05/26 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

古代オリエント博物館で開催中の、「世界の文字の物語」に付随する講演会。
シルクロードということで、楔形文字・ヒエログリフから始まって、東アジアの漢字やカナに至るまでの文字の成り立ちや種類などの話をみっちりと聞けた。

[>世界の文字の物語 ーユーラシア 文字のかたちー
http://aom-tokyo.com/exhibition/160409_writing.html

2016年4月9日(土)〜6月5日(日)

*****************

長い講演会だったのでとりあえず前半のメソ・エジ部分をまとめてメモしておく。


●メソポタミア

お堅いお題目なのにベッキーとか小ネタはさみつつノリノリで語ってくる先生の回。

エジプトとほぼ同時期に文字の使用が開始された地域。始まりは古代都市ウルク(ワルカ遺跡)。
最初期の文字が書かれた粘土板は都市のゴミ捨て場から見つかっているというのは有名な話…。

楔形文字は、穀物や家畜などを計量する会計簿から始まっていて、つまり文字より数字が先に使用開始されている。メソポタミアの文字は「必要にかられて作られた」存在なのだ。

余談だがメソポタミアの初期の書記の神様(笑)は、みんな女性だ。たとえば冥界の書記ゲシュティンアンナとか、穀物の女神でもあるニサバとか。(ナブーは男性書記だが新参者の神) それって、書記の最初の仕事が税収を管理する会計簿だったからじゃないのかと思うんだ。ぶどうの木であるゲシュティンアンナや穀物の女神ニサバが書記なのは、自らの実りの計量を担当するから。

 農耕+都市文明=税収管理の必要性 → 書記の誕生

よって最初は農耕の女神たちが文字(数字)を担当することになる。こう考えると神話との親和性もいいかなと。


あと楔形文字が廃れていったのは、書くのがめんどくさかったからというよりも、後継者を育てる機関が途絶えてしまったからだという話が面白かった。確かに、書くのくっそ面倒くさい「漢字」は、現代まで生き残ってるもんね。ターニングポイントとなるのは

 ・上メソポタミア/アッシリア帝国の滅亡(前612年)
 ・下メソポタミア/クセルクセル王治世の反乱(前484年)

ここで神殿など書記を養成する組織が大打撃を受けてしまい、文書が激減する。それでも紀元後までほそぼそと文字は書かれていたが、やがて紀元後3世紀とかのあたりで書かれなくなり、死語となる。

ギリシャ語とアッカド語がまじった「グレコ・バビロニアカ文書」なんかは初めて見たので、へぇーと思った。時代の境目は面白い二ヶ国語文書が発生するものなんだな。



●エジプト

言語学者の講演はたぶん始めて聞いた。火属性の次に水属性で攻めてきたぞ系。

「文字は言語に着せる民族衣装である」という言葉から始まり、民族衣装というのは民族の威信とかコダワリのようなもので、エジプトでヒエログリフが使われなくなったのはその衣装を変えたことによると説明されていた。ヒエログリフは宗教とも結びついたものなので、キリスト教が需要されたあたりから衣替えが発生したという解釈だ。

最後のヒエログリフは紀元後394年8月24日日付、フィラエ島のイシス神殿の壁。

で、ここからが言語学者らしいアプローチの仕方で、「ヒエログリフとヒエラティック(神官文字)は用途が違うし、書いている人も違う」という話。図にすると、こうなる。

画像


単純にヒエログリフを崩したものがヒエラティックなのではなく、別々に発生した別の文字だというのだ。つまり同じ言語を二種類の文字で書いているということ。古代エジプトは、二文字併用文化(ダイアグラフィ)に当たるという。
そして以外にも、筆記用の文字であるヒエラティックより、石に刻むヒエログリフのほうが発生は後だという。

神官文字/ヒエラティックは神官や書記が書くもの。
聖刻文字/ヒエログリフは石工が石に刻むもの。

用途も違うし、使用する人の職業も違う。考えてみれば確かにそうだな、文字が描けても絵心があるとは限らないし、ヒエログリフはほとんど絵だし…。「書きくらいはしたかもしれないが、そもそも神官はヒエログリフなんて描かない」というのに納得した。



あと言語学者らしい解説が「アブギダ」と「アルファベット」の違い。

子音しかない古代エジプト語は「アブジャド」。
たとえば成田(NaRiTa)をNRTと書くのが古代エジプト語。母音が分からないので、読めるけど正しい発音が分からない。「とりあえず仮でこれ当てはめよう」みたいなお約束に従って再建されているのが現在のカナ表記になる。

子音に記号を付け足して子音のかわりにするのが「アブギダ」。
N'R-T'みたいな感じにして、「'」がついてたらaの音を補い、「-」がついてたらiの音を補うようにするという方式。ブラーフミー文字とか、アジア系の文字に採用されている。

母音がないなら母音用の文字を作ればいいじゃん?という方法をとるのが「アルファベット」。
こちらだとNaRiTaと表記する。ヨーロッパの言語はだいたいこっち。

楔形文字は、この流れに乗れずに消滅してしまうのでどっちでもないが、今ある世界の文字は、「アブギダ」か「アルファベット」かのどちらかに分類されるという。アルファベットのほうが多いのかと思ったらそうでもなく、文字の種類としては半々らしい。このへんは全然知らない新しい世界だ。



●前半まとめ

文字というものが発明されてから、広く使われだすまでの歴史。
ヒエログリフは今はもう実用言語としては使われないが、そこから変形して派生したアルファベットが今も使われているわけなので、子孫が生き残っているともいえる。一方、子孫を残さずに消えてしまったのが楔形文字。一時期は国際語にも使われてたのに、どうしてこうなった…

楔形文字のほうは、それが途絶えたからといってスムーズに別の文字に置き換わったわけではないらしいのも少し気になった。行政記録の必要性から生まれた文字だから、行政の必要性(大都市)が消滅する戦乱期になると必要性も下がったのだろうか。エジプトの場合はギリシャ語やコプト文字と置き換わってるから、まだ分かるんだけどな…。


というわけで次は後半。主に東アジア部分。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

「文字のシルクロード」講演会へ行ってきた。 PART.1 メソポタミア・エジプト編 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる