現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS 他分野だからいえること 「DNAで語る日本人起源論」

<<   作成日時 : 2016/03/19 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

以前紹介した「日本人になった祖先たち」の続編とでも言うべき本。
ここ最近の科学手法の進歩で、DNA解析というジャンルもだいぶデータが書き換わってるみたいです…

DNAで語る 日本人起源論 (岩波現代全書)
岩波書店
篠田 謙一

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by DNAで語る 日本人起源論 (岩波現代全書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ざっくり言うと「日本人はどこから来たのか」という話なんだけど、この本は人類の共通祖先がアフリカで誕生してからの歴史を辿る。考古学のジャンル内だけだと単に日本国内で見つかった人骨の調査だけで終わってしまいがちなんで、世界の人の流れの中で"現在"の日本人を論じられるのがDNA研究の強みだ。

アフリカを出たホモ・サピエンスが、いかにして日本列島に辿り着いたのか。
こないだツッコんだ「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の説明文に感じたモヤモヤは、この本の中には出てこない。何故か考古学や人類学の専門家がはっきり言おうとしないことでも、この本の中では明瞭に書かれている。

 「そもそも"日本"って、現在の国境で研究範囲を分ける蓋然性あるの?」

とか。

 「本州=中心 と 沖縄・北海道=周辺 みたいな分け方に根拠ないよね?」

とか。

 「"縄文人"ってそもそも均一なひとまとまりの民族じゃないよね?」

とか。


究極的には、そもそも「"日本人"はどこから来たのか」を論ずることすら無意味なのではないかと思う。現在日本にいる人たちの祖先、というなら分かる。しかし、日本人はいつから"日本人"になったのか。ナショナリズムなんてたかがここ100年じゃないのかと。うちのご先祖は阿波藩の出身だから、江戸時代には阿波人と名乗ってたはずだ。

そして地球上では、国境や住民がコロコロ変わる地域のほうがほとんどだ。
たとえば今のトルコに住んでいる「トルコ人」の祖先の一部はアジア系の遊牧民族だといわれているが、ぶっちゃけトルコという国に住んでいる人たちは元はオスマン帝国内に在住していた雑多な民族の寄せ集めである。それらをまとめて「トルコ人」と称するようになったのはつい最近の話だ。国で分けて、「xx国の人の祖先は…」と語ることの無意味さを感じる。

日本は、四方が海に囲まれている都合上、例外的に住んでいる人も政体も昔からあんまり変わっていないから、何となく「日本人の祖先」と言っても成立しているような気がするだけだと思う。



本の中で指摘されていた、人種なんて言葉は無意味だ、というのもまさにそのとおりで、特に「黒人」とか「白人」とかいう言い方には明確な基準がない。肌の色がどのくらい黒ければ黒人で、どこから黄色人種なのかなんて決められるわけがない。現生人類はみんなアフリカ出身なのだから、あえて言うなら全員「アフリカ人」になる、というザックリした言い方は、遺伝子学の視点すらすればそうとしか言いようがないだろうな。(人文系の学者は文化・民俗主体の視点で見るだろうから、納得しないだろうけれど。)



この本の中で注目すべきなのは、最初と最後に書かれている「DNAは学問の垣根を越える」ということ。
ほんの数十年前までは限定的な使われ方しかしていなかったDNA解析技術が、今や様々な分野に応用されている。考古学や歴史学、民俗学など文系のジャンルでさえそうだ。

そして他分野だから言える(見える)こともある。この本は考古学の本を読んで私がびみょーにモヤモヤしてたところ(※)に色々バッサリ切り込んでくれているのでスッキリした(笑) まぁ当たり前なんだけどな。当たり前のことなのに、何で言えないのかな。科学たるもの事実に誠実であれ、っていつも思うんだよ。イデオロギーや慣例に従って事実に背を向けてしまったら、その時点から科学ではなくなってしまうんだよ。


というわけで、この本は旧石器時代以前のDNA解析に興味のある人には特にオススメです。


ちょっと難しいかな…と思う人はもうちょっと簡単な本から読み始めるといいかもしれない。
(前作の「日本人になった祖先たち」のほうが内容は簡単。)

日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス)
日本放送出版協会
篠田 謙一

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造 (NHKブックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



******

※モヤモヤしていたところ

たとえば、「縄文人」ってあたかも一つの集団みたいに言われてるけど、ぶっちゃけそんなもの実在しない。なぜなら、のちに日本列島になる場所に人間が流入してきた経路は複数(現在の主要な説では3方向)あり、時期も規模もバラバラだからだ。それらの集団がゆっくりシャッフルされて融合していくわけだが、縄文時代にはまだ一つにはなっていない。というか、人口密度的に一つの集団にはなり得なかった。「縄文人」の実態は、地域差の大きな小集団を全部まとめて呼んでいる呼称になる。

この本に書かれていた、「日本人は、日本列島の中で混ざって日本人になった。」(=日本人の元になった人々の祖先はあちこちにいるが、"現在の日本人"そのものの直接的な祖先はどこにもいない)という説には大いに納得できた。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

他分野だからいえること 「DNAで語る日本人起源論」 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる