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zoom RSS DNA解析の限界/実は単品ではあまり役にたたないという話

<<   作成日時 : 2016/02/03 00:10   >>

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付け焼刃で基本的なところしか押さえられていないけど、まぁそこはそれ。
歴史ジャンルのニュースの中でも最近よく出てくるようになったDNA解析という手法について理解できたところをまとめておこうと思う。

まず基本事項として、DNAと遺伝子の違いは ↓このへんのページ とか参照に。
http://genomedic.jp/DNA_introduction.html


・「DNA」は遺伝情報を記録している物質

・「遺伝子」はDNA上の、タンパク質の作り方を記録している場所(DNA中の1.5%)

・「ゲノム」とは生物にとって必要なワンセットの遺伝情報

なので「DNA解析」と「遺伝子解析」は別モノ、「遺伝子解析」と「ゲノム解析」はおそらくほぼ同じ内容になるはず。
わりとここポイントだと思う。

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というわけで本題。

DNA解析っていうと何か万能な雰囲気があって、色んなことが判るんでしょう? みたいな感じに思われてる面があるんだけど、ぶっちゃけ単体では大して役に立たない。 そして、出てきたデータを解析するのは人間なので、同じデータからでも人によって全く異なる結論を出すことが出来てしまう。

特に考古学ジャンルで出てくるDNA解析は、それ単体で使われている場合は、ほとんどの場合 結論が怪しいということを特に書きたい。なんか間違ってたらごめん。

なお、以下は基本的に動物のDNAの話だと思ってほしい。


************

解析の結果、「ある固体(A)のDNAと別の固体(B)のDNAの間に親子関係がある」という話が出てきたとする。これはDNA解析だけから分かる話なのでOKだ。しかし「ある固体(A)は別の固体(B)の先祖にあたる」という話が出てきたとすると、実は、二者のDNA解析だけからは分からない。

なんでかというと、AとBの間の親子関係は、DNAだけだと どっちが親なのか分からない からだ。


AとBが今生きている人間で、Aの年齢がBより高ければ、Aが親だとわかる。
しかしAとBの死んだのがともに1万年前だったとすると、どっちが先に死んだのか特定するのは困難だろう。Aの死亡年齢が20歳、Bが40歳だったとすると、本来はAが親であるにもかかわらず、Bを親と考えてしまうかもしれない。


AとBの親子関係を証明出来ても、Aが親かBが親かはどちらが先に生まれたか分からないと結論が出ない。


これは、「AとBは血縁関係にあるようだが、Aが先祖なのかBが先祖なのか分からない」ということでもある。

人類の祖先についての遺伝情報の研究では、その祖先が生きていたのが何時頃の時代なのか分かっているので、この点は明白である。アウストラロピテクスと我々の間に遺伝関係があるかもしれないという研究があるが、アウストラロピテクスは我々よりずっと昔に生きた人類なので、もちろん「関係がある」とすれば、アウストラロピテクスのほうが先祖で、我々が子孫という関係になる。

逆にはっきり言えないのが、今生きている犬のDNAから犬の発祥地を遺伝学から明らかに出来ないかという研究だ。Aの犬種とBの犬種の間に関係がある、と分かっても、AとBのどちらが先にその遺伝子を継承したかなどもはや分からない。そもそも犬の原種に近い種類はほとんどが既に絶滅している。やるなら、大昔の犬の化石から遺伝子を抽出するしかないだろう。たった百年前だったとしても、少なくとも、その犬は現在生きているどの犬よりも先に生まれていることが確実だからである。



つづいて、親子関係の解析は近親婚があるとかなり難しくなってしまう という話。

遺伝子は父と母から引き継がれるものである。すばらしくシンプルな図になっているが、基本的に以下のような感じだ。色をつけているのが、その人に特徴的な遺伝子、マーカー部分だと思ってほしい。

画像


子のもつマーカーが父と母のものとそれぞれ一致すれば、親子関係は立証される。
しかしこれが近親婚になると…
画像


第二世代と第三世代の区別がつかなくなる \(^o^)/



また、父と母の遺伝が半々になるということはマーカーが全て受け継がれるとは限らない。
たまたまこういう状態になったとしても…

画像


やっぱり第二世代と第三世代の区別がつかなくなる \(^o^)/


というわけで、近親婚の例が満載の古代エジプト王家でDNA解析なんて始めた場合には、そもそもムリだろって最初にツッコミを入れてください…。ツタンカーメンのDNA解析とか。

各ミイラの名前と家系図がはっきりしていればともかく、誰が誰の子供で、どのミイラが誰なのかも分からなくて、しかも保存状態最悪なミイラから断片的なDNAだけ回収してどこまで断定できるのかと。

当初から、あのDNA解析プロジェクトには各方面から疑問とツッコミが入ってましたが、こうして図にすると「そりゃ皆疑うよね」って分かると思う。ちなみにあの解析の生データはいまだに公表されていない。都合いいように捏造して公表してこないだけマシだけど、このまま公表せず有耶無耶で終わらせる可能性もある…かな…。


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更に、DNAは、先祖のマーカーが受け継がれるわけではないという点にも留意が必要だと思う。
たとえばこんな感じで遺伝してたとする。

画像


第四世代の子孫を解析して、第一世代を正確に先祖と断定できるか。答えはNOである。
なぜなら第一世代の母側の情報がキレイに消えてるから。
実際にはDNAは複雑なので全く痕跡がなくなる可能性は少ないかもしれないが、一部の痕跡が上書きされただけでも先祖-子孫の関係が見えなくなることはあり得るだろう。

また、第四世代から見て、第一〜第三のどの先祖がいちばん昔の先祖なのかは、DNA情報だけからでは分からない。それぞれの生きた年代が分かっていれば正しく順序づけられるが、そうでなければ、せいぜい「血縁関係がある」止まりだろう。


これは、Y染色体の分析の場合でも同じである。

人間の染色体が、男性はXY、女性はXXなのはご存知のとおり。子供が男の子なら父親からY、母親からXが引き継がれる。子供が女の子なら父親からも母親からもXが引き継がれる。

画像


ということは、子供が女の子ばかりか、孫をもうけるのが娘だけだった場合は、父親のY染色体に含まれる情報は子孫には一切伝わらない、ということになる。マーカーが消えてしまうどころか、丸ごと消滅する。

たとえばこういう状態になったとする。

画像


第五世代の女の子が将来男の子を生んだとしても、その男の子が持つY染色体の中のDNA情報は、第五世代の女の子が結婚した男性のものでしかない。男系の先祖は辿れないのである。

最も逆に、この特性を利用して、男系の先祖が繋がっているかどうかだけを調べることは出来る。イングランド王リチャード3世のDNA解析では、男系の先祖からの遺伝が途切れている箇所が見つかっている。これは、リチャード3世以前の誰かが実は嫡子ではなかったことを示している。浮気による子供がいた、と言い換えてもいいかもしれない。ただしこれは、確実に曽祖父のものと分かる遺骨が見つかっていて、Y染色体の情報を比較できたからこそ出てきた話である。


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というわけで、DNA解析で分かることは、実際はものすごく限られた範囲で、確実な結論を出すには、データそのものより状況証拠のほうが必要、ということが少し分かって貰えただろうか。

単品で何か結論が出せることは滅多に無い。
たとえばリチャード3世の先祖の話だと、まず歴史学の知識として正ししい家系図が分かっており、比較する家族の遺骨があり、その遺骨が正しくその家族のものであるかどうか伝承だけではなく人類学の観点からも確認されている必要がある。その上で適切な方法で遺骨からDNA情報が抽出され、比較されれば、おそらく正しいだろうと思われる結論に達する。

だいぶザックリした説明だが、このへん少し知識があると、DNA解析の限界を無視して無理やり結論を出そうとしている怪しい学説の見分けがつくようになると思うんだ。

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