現在位置を確認します。

アクセスカウンタ

zoom RSS かつてシリアに暮らしていたジプシーは今どこにいるのだろうか…

<<   作成日時 : 2016/01/09 00:10   >>

トラックバック 0 / コメント 0

えっシリア? ジプシーってヨーロッパにしかいないんじゃないの? と思ったアナタと、ジプシーって差別用語だからロマって呼ばないといけないんじゃないの? と思ったアナタは、過去記事を見てね。

アラブのジプシー、知られざる世界/そしてロマとは呼んではいけない人々
http://55096962.at.webry.info/201205/article_20.html

 ●いわゆる"ジプシー"な人たちは、ヨーロッパ以外にも広く分布している。ちなみに"ジプシー"は英語だが、フランス語には"ツィガーヌ"という言葉があり、アラビア語には"ガジャル"という言葉がある。要するに言語圏によって色々適当に呼んでいる。

 ●ジプシーたちを呼ぶのに自称と他称があり、ジプシーとかガジャルとかいうのは他称。ロマは自称の一つだがルーマニアを中心とする一派の呼び名であり、それ以外の地域のジプシーたちはロマを自称しない。全部一緒くたに「ロマ」にしてしまうほうが失礼となる。

 ●ジプシーは一つの民族というより多数の氏族から成り立っており、言語からインド南部の起源と考えられているが、大元は複数あった可能性がある。(つまり現在存在する"ジプシー"が全て同一の発祥を持つとは限らない)


このあたりを抑えておくと話しの続きに入りやすい。

というわけでシリアなのだが、かつてシリアにジプシーの一派を探して入り込んだ日本人がいる。「ジプシーをたずねて」という本の作者だが、その本によるとかつてシリアには「クルバット」と「ナッワール」という二派のジプシー集団が住んでいたという。クルバットは歯科医であり、金属加工のスペシャリスト。ナッワールは男が働かず、女性たちが踊り子として稼ぐ。同じ「ジプシー」でも全く異なる生活スタイルをもっていて、お互い仲が悪い。クルバットから見たナッワールは「ふしだらな連中」だ。

面白いのは、シリアにおけるジプシーは、双方とも定住していて、それなりに裕福な暮らしをしているところだ。
特にこの本で取材に行っているクルバットの一家は、かつてトルコから逃れてきた難民で、シリア政府の援助を得て定住したのだという。以下にその部分を引用する。

"この家族の話からいろいろなことが見えてきた。シリアではクルバットは政府の保護政策のおかげで比較的穏やかに暮らしている。それと引き換えに彼らクルバットの15万人もの人口が、アサド政権の支持者としてアサド父子に感謝さえしている。そして彼らはアサドにとっての政権基盤の一つともなっている。

「ジプシーを訪ねて」(岩波新書)"


逆算すると、クルバットに属するこの一家が逃れてきた時期のトルコは「トルコはトルコ民族だけの国である」という国粋主義政策をとり、トルコ語以外の言語を事実上認めず、少数民族の弾圧をしていた頃かと思う。その時代に、多くの少数民族がトルコからシリアに逃れた。(そして今は逆に、戦火を逃れようとトルコに難民が流れているわけだが…)

ジプシーに対し保護政策をとっている国は多分そう多くない。この本の中でも、多くの国で生きることに精一杯の極貧生活をしているジプシー集団が出てくる。そんな中、アサド政権は彼らに家を土地を与え、人なみに生きられるよう配慮したのだ。もちろんそれは、票集めのための政策でもあったのだろうが、アサド政権の「善」の一面でもある。

アサド政権がシリア全域を支配していた時代、もう一方のジプシー、ナッワールもまた、安定した暮らしを送っていた。裕福な湾岸諸国のお金持ち相手に女性たちが踊りを見せて稼いでいたのである。しかし今となってはもう、ナッワールたちの経営していたリゾートレストランは残っていないだろう。彼らは今ごろどこにどうして暮らしているのだろうか。




何か政治的な要求を掲げてデモや反対運動をする人たちは、何か今以上のものを得ようとしてそれを行う。無意識のうちに、「今あるもの」をそのまま持ち続けた上で「それ以上のもの」を得られると思い込んでいる。
しかし現実には、「今あるもの」のうち何かを失った上で「それとは別のもの」を得るしかない。

シリアに内乱が「起こされ」てから5年が経った。

かつてシリアで安定した暮らしを送っていた人々の多くが生活を失い、国外へ逃亡するか、死ぬか、あるいは今まさに死んでいこうとしている。民主化という名のもとに奪われた多くの平穏な暮らしのことを思う時、果たして正義とは何なのかを考えざるを得ない。



* 因みに中東の窓ソースだと、「2011年以来のシリア内戦での死者数は26万人」となっている。西側やトルコ的には「アサドのせいで死んだんだ」ってことにしたいでしょうが、どう考えてもそうじゃないよね…。

* 反対する者は皆殺しにしてでも正義を成す、というのは、とても危険な思想だと思う。その考え方だと、シリア内戦はあと何十万人か殺さないと終わらないし、何か争いが起きるたびに膨大な人数が殺されることになる。


ジプシーを訪ねて (岩波新書)
岩波書店
関口 義人

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ジプシーを訪ねて (岩波新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

かつてシリアに暮らしていたジプシーは今どこにいるのだろうか… 現在位置を確認します。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる