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zoom RSS 「スフィンクスの頭部は別の石でできている」という謎の説の出所を探して

<<   作成日時 : 2015/10/25 00:10   >>

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こないだ行ったエジプト展の説明パネルに堂々と書かれていて、「ファーwww??!!」ってなった話。「スフィンクスの頭部は別の場所から運ばれた石で出来ている」…

いやいやいや。そんな説聞いたことありませんけど。
ていうか別の石だったら 切れ目どこなんだよ。

あまりにもショッキングだったので、一体どこからそんなわけのわからん話が出てきたのかと調べてみた。
(※なお、このパネルは12月末の二回目訪問時点では別のものに変わっており、「一枚岩から出来ている」に変更されてました^^;)


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ちなみに、まぁた吉村のおいちゃんがやらかしたのかと思って最初に図書館にある限りの著書を調べてみたけど、そこにはなかったです(笑)



ならばと日本語でググってみると、ネット上には、スフィンクスの頭部は別の石でできている、と、さも当然のような顔をして書いているサイトがいくつか見つかった。真っ先に出てきたのはWikipediaである。oh....またかウィキペディア...(笑) しかもソースを書いていない。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%82%B6%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%B9

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まさにコレ。

コレが森ビルのエジプト展のパネルにばばーんと書かれてたんですよ。何故に?
手持ちの本には出てこないし、英語でググっても出てこない。もちろん英語Wikipediaにはこんな記述はないから単純な翻訳でもない。


他にはカイロ日本人学校の人が書いたらしいものも出てくるが、このケースについては誤解しているわけできないかもしれない。材質は確かに胴体部分と異なるのだ。ただしそれは、よそから持ってきた石をくっつけたわけではない。地層が体の途中で3層に分かれている、という話で。

http://www.zenkaiken.jp/niigata/hp/CAIRO/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%81%A0%E3%82%88%E3%82%8A%20%20005.pdf


さてここで、日本語で探し出すことのできた論文をひとつ紹介しよう。

「石造文化財の保存 : 11. 大スフィンクス修復保存学術調査(その1)」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003975569

右側に表示されているページ画像をクリックするとPDFで開かれて読むことが出来る。スフィンクスを構成する材質や、修復方法について詳しく考察されている。

"基底部(メンバー1)はサンゴ礁で、胴体部(メンバー2)は厚さが15mでサンゴ礁への流入土砂の堆積層から成るものである。これを7層(ユニット)に分類している。また頭部(メンバー3)は泥灰質でメンバー2にくらべ、緻密で硬質である。一般にメンバー2と3は一見して異なる地層との印象が強く、近辺に同じ地層構造が確認されなかったため考古学者の間では、頭部は別の場所から運ばれてきたものとの説もある。"


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スフィンクスを構成する堆積層が3層であることがはっきり書かれている。
また、1997年に発表されたこの論文で既に「頭部は別の石と考える人がいる」と記載があるので、その頃には既にあった考えなのだろう。しかしその後、とくに主流にはなっていない。

 何故か。
 
 切れ目がないからである。(´・ω・`)

高画質な写真とかネットにいくらでも落ちてるのでよく見てみるといいと思う。どこにも継ぎ目がないのに、なんで別の石ってことになるのか分からない。

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ただし、現在の状態は"修復後"であり、風で削れていた部分をかなり埋めている。
修復前の写真だとこんなカンジで、首だけ材質が違うように見えるし、首のあたりがえぐれこんでいるので、別の石なのかと疑いたくもなる気持ちは分からんでもない。

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/b/b6/Sphinx_partially_excavated2.jpg

だが硬い石の層と柔らかい石の層の隙間が風化するとこうなるのはいくらでも事例があるし、実際問題として、接着された面があれば、修復時に発見されている。そんなものは見つかっていないのだ。もしソースがあるのなら是非教えてもらいたいくらいだ。


別の場所から頭だけ持ってきたなら、当たり前なのだが接合面があるはずである。石材の質が首の辺りで変わっているのは確かだが、そこは層どうしが切れ目なく斜めに融合している。まさか古代人の謎パワーで石が癒着するわけもなし、別々の石ならモルタルか何かでくっつけなくてはならないが、そんな跡もない。ついでに言うとエジプトは100年に一回くらいは大地震に見舞われる土地柄なので、石をのっけただけだったら首はとっくに落ちているはずだ。


頭部が胴体部分に対して小さいのには、以下のような説が考えられている。

 ・リテイク(掘りなおし)がされた際に予定より一回り小さくなったから
 ・掘り出している最中に胴体部分に亀裂が見つかったため予定より胴体を大きくしたから

つまり、頭が予定より小さくなったか、胴体が予定より大きくなったかという二通りだ。


1つめの「掘りなおし」説については、たとえば、「元々はライオンの顔として作られていて、あとからヒトの顔に直されたのでは?」と唱える説がある。

http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-1092827/The-Great-Sphinx-Giza-reborn-lion-desert.html

大スフィンクスの顔は横から見ると下あごが突き出していてどことなく獣っぽく見えるが、それは元がライオンの顔だったから、ということだ。これはこれでなるほどと思う説。ただ、スフィンクスの建造年代を初期王朝時代まで遡らせていることについては、主要な考古学者の支持は得られなかった。


2つめの「亀裂」については、さきに紹介した大スフィンクス修復保存学術調査の「その2」のほうに詳細図が存在する。

http://ci.nii.ac.jp/els/110003968536.pdf?id=ART0005443143&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1445670074&cp=

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この亀裂は、スフィンクスの空撮写真などをじっくり見ると壁に残っているのが分かる。
岩盤を掘り出してみたら、ちょうどお尻にあたる部分に大きな亀裂が入っていて、予定通りに掘るとお尻が欠けてしまうことになるので、予定より胴体の長さを伸ばしたのではないか、というのだ。

そもそもの話、大スフィンクスは元からあった岩盤を掘り出して作っているので、首だけ別のところから持ってくる必要性がない。頭から掘り出せばいいだけの話である。今でさえ、胴体部分は周りを掘り下げて作っている。もし仮に頭を作るのに失敗したとしても、そのぶん深く掘ればいいだけの話ではないか。だいいち、一枚岩で掘り出すから意味があるのであって、首が別の岩では「完全なもの」にならない。日本風にいうと縁起が悪い。形ができていればいいのではなく、一つの岩で出来ているから意味がある。

周囲に似た石の層がないというのも、別段不思議な話ではないと思う。
スフィンクスのあるあたりはギザ台地のいちばん端に辺り、かつてはナイル川の氾濫が目の前まで来ていた場所にあたる。硬い層の厚みが薄かったのかもしれないし、場所的に、周りの硬い石は建材として使用されてもう残っていないかもしれない。というか、カッパドキアみたいな地形じゃないのこれ。基本は侵食されやすい柔らかいそうで、所々に硬い岩が入ってるっていう。

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私には、なぜエジプト展のパネルが、Wikipediaにしか載っていないような話を唐突に断定系で書いたのかが分からない。
また、それを見ていたはずの専門家たち(監修の人や内覧会で行った人)がなぜ何も言わなかったのかが分からない。

単にお前が知らないだけで近年ではそれが主要な説なんだ、と言うのであれば、今から勉強するので是非ソースを教えてもらいたい。英語でも日本語でも、検索した限りそれらしい研究のひとつも引っ掛かってこないのである。どこかに「頭は他所から持ってきた石」と唱えた説はあったのかもしれないが、少なくとも断定形で書くような主要な説ではないはずだ。

いずれにしても私は、大スフィンクスの首が別のところから持ってきた石だという説は、エジプト展のパネルを見るまで全く聞いたことも無かった。このような説を、なんのソースもなく断定するのは不親切だと思うし、もし正しくない説を載せてスルーしていたのなら恥だと思う。


というわけで、明確なソースは一切見つからなかった。あんまりにも納得いかないので、ちょっとガチでこの説の出所を探してみようかと思う。
あと誰か、Wikipediaの該当の記述に「要出典」つけといてほしい。





…スフィンクスの「ヒゲ」の部分については後から別の石で追加されたと考えられている(破損したヒゲは大英博物館にある)が、まさかそれと混同してたりはしないだろうなぁ…。


**********
追記分

スフィンクスの頭は別の石で作られている、と書いている本を一冊みつけた。「古代エジプト」笈川博一(1990)。
該当箇所は以下。

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しかしコレ、ソースは何も書かれていない。しかも「〜らしい」と伝聞を連発している箇所なのでうーんという感じだ。
おまけに、実際はスフィンクスの体の侵食が一番進んでいるのに、「いくら塩の結晶でも自然の岩山を壊すのには暇がかかる」などと適当なことを書いてあってちょっとびっくりする。この時代はこのくらいでも誰もツッコまなかったのだろうか。

この時代には、ソースになっている記述がどこかにあったのだろう(逆にこの時代の後にはなくなったのだろう)と推測できる。

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