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zoom RSS ベーオウルフの長埜訳を手に入れてきた

<<   作成日時 : 2015/09/24 00:10   >>

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吾妻書房の長埜訳1967年第二版、古本屋で手に入れて来ましたよっと。
お前は何種類そろえるつもりだとツッコまれそうだけど。ええねん好きな話の翻訳は何種類あっても楽しいねん。

訳者ごとに雰囲気のかなり違うベオ邦訳、この長埜訳の特徴はなんといっても「読みやすい」そして「登場人物の口調がやわらかい」。一人称が「我」とか「わし」とかと「わたし」では全然違う。そして語尾が「〜である」調と「〜です」調では性格が異なる。これぞ日本語の妙。この訳のベオは優しくてとてもいい人。

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たとえば一番最後、ベオが死の直前に言うこのセリフですが…

"今や予が老い先短き命を擲(なげう)って秘宝を
購(あがな)ったるからには、この先民の望みを充たすよう
心を用いよ。予はもはやこの世に留まること能(あた)わず。
荼毘の炎静まって後、勇名高き者どもに命じて
海に伸びたる岬に大いなる塚を築かしめよ。
さすれば、その塚はわが民の想い出の
よすがとして、鯨(いさな)ヶ崎に高々と聳え立ち、
霧立ち籠むるわたつみを越えて遠方(おちかた)より
大船を操り来る後の世の船人どもは
これを称してベーオウルフの陵(みささぎ)というであろう。"(岩波文庫、忍足訳)


↓こうなる

"わたしが宝の山のために
わが老(おい)の生命(いのち)を支払ったからには、
これよりは、民の困窮に意を用いなさい。
わたしはもうこの世に居れないだろう。
戦いに勇名を馳せた者どもに命じて、
葬火の終わったのちに、
堂々たる塚を海の岬のところに築かせなさい。
それは民のために記念として
鯨の岬(フロネスアネス)に高々とそそり立つように。
さすれば遠くのくにぐにから
海原の暗い狭霧(さぎり)を分けて
船を走らす海ゆく舟人たちは、
それを後々までも
ベーオウルフの塚と呼んでくれよう。"(吾妻書房、長埜訳)



「民の困窮に意を用いなさい」ときたもんだ。めっちゃ丁寧。家臣に話しかけてるのになんだこの優しさ。他の訳でも「民のために尽くせ」とか断定で命じてるのが多いのに、この訳のベオだと息子か生徒にでも話しかけてるみたいな口調。敬語の使えるゲルマン戦士。このベオいいな…。


解説も丁寧なので、今は新本が手に入らないだろうことが残念だ。
これはこれで、定番の岩波文庫版とは別に出版されればいいのにと思った。

あと、物語の翻訳はマジメに翻訳者次第でかなり変わるので、「正しい訳」などというものは幻想だと思っておくといい。あるのは「名訳」と「凡訳」と「それ以外」だ。


**************

Beowulf邦訳本リスト
http://55096962.at.webry.info/201102/article_19.html

「フィンズブルフの戦い」とベーオウルフ
http://55096962.at.webry.info/200902/article_30.html

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