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zoom RSS メイドゥムのガチョウ(雁)は贋作? 巻き起こった議論の行方は

<<   作成日時 : 2015/08/21 00:10   >>

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やや旧聞となりますが、有名な「Meidum Geese」の絵が19世紀に描かれたニセモノでは? という疑問の提示があった模様。今年の4/1に流れてたニュースなんですがね…ジョークかと思ってたけどマジで議論になってたのね…。

Shocking Discovery: Egypt's 'Mona Lisa' May Be a Fake
http://www.livescience.com/50309-egyptian-mona-lisa-may-be-fake.html

メイドゥム・グースってなんぞ? という方はこちら↓の図をご覧下さい。
画像


たぶん一回はどっかで見てるはず。そのくらい有名な絵。
発見場所はメイドゥムの崩れピラミッドのすぐ近くの古王国時代のマスタバ墓TT37、被葬者は第4王朝のファラオ、スネフェルの王子のひとりネフェルマアトと妻アテト。発見者はオーギュスト・マリエット、発見は1871年。

これに疑問を呈したのがイタリアの考古学者、Francesco Tiradrittiという人物。
疑問の内容を見ると、以下のような理由から「これは発見時に描かれたものではないか」と考えるようです。

 (1)描かれている鳥がエジプトにはいなかったはずの種類

 (2)鳥の絵にひび割れが少ない

 (3)使われている色が特殊なものであまり見かけない

 (4)鳥を同じ大きさでセットにして描く構図のとり方は古代人はしない

(1)の部分がキッカケとなって疑いはじめたと言っています。
古代エジプトの絵は生物の特徴をかなり正確に描くので、種類の特定がわりと楽です。この「Meidum Geese」の絵に出てくるガチョウは3種類。対比表は以下のとおり。

画像


このうちbean geese (Anser fabalis) について、「北部スペインとトルコ、ギリシャにしかいないはずだ」とTiradrittiは述べています。ここから疑問が連鎖していったとのこと…なんですが… うん?

いや、トルコやギリシャにいたんなら、エジプト人知っててもおかしくね? 
つか古王国時代って今から五千年も前だし、生息域が現在と違って、地中海の反対側まで広がってたかもしれないしなあ。これだけだとちょっと根拠としては甘い気がする。

(2)と(3)についても、絵の拡大図を見る限り普通なんですよね。「下に元の絵が隠れてて、きれいに見えるように書き直されたのでは」なんて言ってますが、どうなんだろう、このレベルで描き直せる人ってそうザラにいないし、すぐ描き直せるようなものじゃない気がする。これが書き直された絵だとすると、もはや超一級プロの美術修復レベルですし。


さて、これに対して素早く反応したのが、毎度おなじみザヒ・ハワス博士。http://www.drhawass.com/wp/the-meidum-geese-are-not-a-fake/

「そういうの発表するときはウチ通してもらわなうと困るんだけど。てきとうなこと言わないでくれる?」と相変わらずの脅しから入るのはアレですが、反応の速さと仕事への情熱には本当に感心します。

ハワス博士の述べている反論:

(1)他にも同様のガチョウが出てくる絵がある
  ・第5王朝のMry-If-Benifの墓
  ・ポーランドの最近のミッションで発見された墓

 →これはどの絵なのか確認とれず。ポーランドのミッションはこれかな…?
 ただ、ここにある写真には、絵はないです。
  http://archeo.edu.pl/sakkara/default.htm

アブシールとサッカラの絵では32種類のガチョウが確認されている。エジプトにいたガチョウの種類は思われているよりも多い。

(2)最近描かれたとするならば、現在の退色はこの145年の間に発生したことになるが、それは不可能

(3)特殊とされたベージュと茶色は、アブシールの墓ではよく出てくる
  サッカラではKa-APERとFetetkyの墓で使われている

 →Kaaper(通称村長)の像は有名だけど墓の絵って?! と思って探してみたら、なるほどレリーフもあったみたいだ。
 http://www.dia.org/object-info/a84c9ed5-5b2b-4108-862d-c031e1f35752.aspx?position=1
 茶色は…確かに鳥に使われてるのに似てるかもしれない… ベージュもどっかにあるんだろうか。

(4)左右対称のスタイルは古代エジプト人の美的感覚に沿うものである

 →これは確かにそうで、ちょっと探してみただけでも類似する「同じ大きさの鳥を二羽並べている」というモチーフは、ネブアメンの墓に描かれた庭園の絵とかにありました。新王国時代の絵だけどね。

 
画像



というわけで、なんかいまいち根拠としては甘い話かなぁと。せめて顔料の成分分析とか、絵のX線確認しかしてから言わないと…。
すごいいい状態で残ってるから、これ贋作なんじゃね? って疑いたくなる気持ちは分からないでもないけど、さすがに発掘状況が記録されてるモノに対してまで贋作疑いはかけなくていいんじゃないかって気がする。もしこれが贋作だったら、発掘者自体が遺物を偽造してることになりますからね。


続報もなく、この議論はあまり膨らまずに終了しそうな感じなんですが、それにしても、種類が特定できると壁画が俄然面白くなりますねこれ。もしかしたら現代には絶滅してしまって存在しない鳥とか描かれてるかもしれないし、古代の壁画から探る動物学とか面白そう。
ヒマが出来たら(出来ないけど)、エジプトの壁画に描かれたガチョウの絵でも探しにいってこようかと思います。

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