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zoom RSS 遺跡から出てきた植物はこう分析されている。植物と考古学

<<   作成日時 : 2015/07/06 00:10   >>

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お堅い教科書系の専門書を出してる雄斐閣のシリーズは難しいのが多いけどハズレはまずない。
これも標準教科書的な本だった。細かい分析法までは載ってないけど、おそらく一般的な入門書としては十分。

植物と考古学 (考古学選書)
雄山閣出版
ジョフリー ディンブルビー

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第一章は「人間はどのように植物を利用してきたのか」ということ。第二章は「どのような資料が遺跡から得られるか」、第三章は「それらの解釈」。遺跡から出てきた植物は必ずしも全て人間が利用したものではないし、逆に、利用していたけど組織が脆かったり量が少なかったりして残っていないものもある。゜植物は、動物の骨などに比べるとはるかに脆い。

人間はまず農耕を始めたのか、農耕と牧畜を同時に始めたのか、牧畜が先だったのか。
いちおうは農耕ということになっているが、最近では、ほぼ同時だったんじゃないか? という説が有力になりつつあるように思う。それはこの本の範疇ではないが、読みながら少し気になっていた。

植物を育てるほうが、動物を育てて食べられるようにするよりも、はるかに楽だ。しかしそもそも動物は、食べるために飼育されはじめたのではなかった。ヒツジもウシもウマも、最初は、毛や乳、労働力といった、殺さずに利用できるものを目的として飼育され始めた。実は植物も、最初は「食べるため」ではなく、嗜好品や医療用などの目的で栽培が始まったのではないかという議論がある。というのも、遺跡から最初に見つかる植物は穀物ではなく、主食にはなりえないものだからだ。そして、トウモロコシにいろイネやムギにしろ、野生種のままでは、栽培コストにみあう収穫が得られない。

あるいは人間は、食べるために農耕を始めたのではなく、滅多に野生で手に入らない嗜好品種を最初に栽培しはじめ、その過程で植物の品種改良や、種まきによって増やすということを知ったのではないだろうか。これは今まで自分にはなかった視点だ。そもそも農耕は、非効率的な作業である。メンドクサイ。簡単に移住も出来ない。なにより一回失敗するとその年の収穫が全部おじゃんになってしまう賭けのような生活だ。

人類が最初に覚えた栽培とは、種まきや株分けではなく単純な「移植」だったのではないか、ということもこの本の中に書かれていた。なるほどと思った。移植であればコストは低い。また、狭い範囲に同じ植物を密集させて育てれば、交配もおきやすくなる。コムギの栽培種の誕生などはこれで説明がつくのではないかと思う。実に興味深い。



あと、遺跡から出てきた植物の種類の同定法が面白かった。
エジプトのような乾燥した地域ならともかく、湿気のある地域では、植物の痕はほとんど「染み」のような状態で残っていることが多いという。その状態からどうやって種類を特定してるのかと思ったら、木材の場合は、断面図の構造で見分けているらしい。

画像


なるほど構造が違うんだなと感心した。
その地域に当時生えていた植物の近似種が現在も生きていないと無理だろうが、こういう同定法もあるのだ。あとは花粉の形状とか。花粉は、植物の中でも最も残りやすい部分だ。そしてその形状は植物ごとに違う。ただし花を咲かせる植物でないと残らない。



植物考古学は、土器や建物の遺構といったものとは別の角度から、そこに暮らしていた人たちの生きて暮らした証を明らかにしてくれる分野だ。花粉などは目に見えないものだし、発掘中に出てきた泥のようになってしまった有機物なんか残すとは限らないし、なかなか記録が残りづらい。最初から目的をもって見つけようと思っていなければ見つけられない証跡も多い。

しかしながら、うまく活用出来るならば、ほかの考古学ジャンルでは解明できなかった謎をとくこともできるかもしれない。(あるいは、見過ごされていた新たな謎を浮かび上がらせるかもしれないが。)

以前聞いた、ピラミッドのふもとから出てきた炭化したオリーブの実の話を思いだす。古王国時代、エジプトはすでに地中海の向こうとの交易を行っていたのか。それともエジプト近辺にオリーブの自生地があったのか。あるいは栽培していた場所があったのか。一粒の種や一片の木材が語る、そんな歴史もある。人はこれまでの歴史の中で、多くの植物をさまざまに利用しながら生きてきたのだ。

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