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zoom RSS ちょいとマヤまで花摘みに。「コパンの王権はティカルから来たか?」の講座に行って来た

<<   作成日時 : 2015/06/01 00:10   >>

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いつもいつもエジプトだと思うなよっ!
たまには中米いくぜ、ってことでマヤ講座に出かけてみた。

古典期マヤ文明の起源に迫る
https://www.asahiculture.jp/shinjuku/course/855797fd-6d2a-0d47-6c65-54d18c57ee14

講師の先生はコパンで王墓を発見したことで有名なあの先生。


講座自体の感想は「微妙」。
朝カルでやる講座は、概して講座の対象者レベルがかなり低く、テンポも遅い。もしかしたら教室側が「初心者にもわかるように」とか注文をつけているのかもしれないが眠くなるんだよ…。(´・ω・`) 一時間半のうち一時間は「マヤとは何ぞや」から始まり、今までやってきた研究の概要とか、本読めば分かる話だったんだよなぁ。全くマヤについて知らないおじーちゃんおばーちゃんならイザ知らず…うーん。

概要なんて「もっと詳しく知りたい人はこの本読んどいてね」で参考書だけ出して10分くらいで流していいと思う。まあなんだ最初の一時間の内容は↓この本にほぼ全て書いてあるです。

マヤ文明を掘る―コパン王国の物語 (NHKブックス 1086)
日本放送出版協会
中村 誠一

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で肝心の部分が30分しかなくて、むしろそっちがだいぶ説明不足な感じになっていたので、後で自分で補足しておいた。この先生がやろうとしていることは、マヤの墓から出てきた人骨の成分を分析して、"マヤ地域"内での人の移動を立証するということのようだ。



マヤという一つの国はない。統一の言語すらなく、"マヤ諸語"と言われる言葉を話し、マヤ文化を共有した人々の住んだ、ユカタン半島あたりの広い地域を"マヤ地域"と言う。その地域の中に都市が点在していて、時期によって隆盛したり衰退したりを繰り返していた。

で、古典期と呼ばれている時代に繁栄を誇ったのが、講師の先生がかつて発掘していたコパン、そしてこれから発掘するティカルだ。

コパンは紀元後427年ごろ、初代王ヤシュ・クック・モによって起こされたとされる。その初代王は、先に繁栄していた北の都ティカルから来たのではないかという説がある。その人の移動を、人骨の成分分析によって証明できないか、というのが今回のメインテーマとなっていた(なるはずだった…)研究。


どうして人骨の分析で人の移動が判るのかについては、たとえば以下のドキュメントに詳しく書かれている。


エル・サルパドル共和国出土人骨の14C 年代とストロンチウム同位体比(PDF)
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=4&cad=rja&uact=8&ved=0CDMQFjAD&url=http%3A%2F%2Fresearchmap.jp%2F%3Faction%3Dcv_download_main%26upload_id%3D64467&ei=ostpVYbFLczq8AXkt4DIAw&usg=AFQjCNGbYFkVZZEg0Zvi02EIGddxhVPeLA&bvm=bv.94455598,d.dGc


"ところで、Sr、Ca はいずれも第2 族元素で化学的性質が似ており、Sr2+ とCa2+のイオン半径の大きさも近いため、骨を構成するヒドロキシアパタイト( C aS(P04)3(OH)) 中において、Ca のSr への置換が起こりえる。すなわち、体内に入ってきた食資源の87Sr/86Sr 比が、骨の87Sr/86Sr 比に反映される。特に、人の永久歯は生まれた頃の地質のSr を反映し、骨の87Sr/86Sr 比は、死ぬ直前の数年間に住んでいた土地の地質を反映すると言われている。したがって、同一個体の骨と歯の87Sr/86Sr 比を測定することにより、人の移動の情報を得ることが可能である。"


ストロンチウムというと原発事故の時にストロンチウム汚染がーとか騒がれまくっていたが、自然界の土壌に普通に存在する物質のひとつなので、ぶっちゃけ普通に暮らしていても人骨の中には入ってくる。住んでいた地域の地面の性質によって量が変わるので、その含有量でもって地域を特定しようというのだ。

生まれた土地のストロンチウムは永久歯の中に残るが、死ぬ数年前に暮らしていた地域のストロンチウムは骨の中に残る。というわけで、コパンで死んだ人の歯に含まれるストロンチウムの量がティカル地域に近ければ、子供の頃にティカルに住んでた人が移動してきたのではないかと仮説を立てることが出来る… というわけ。

このほかに酸素同位体の含有量も掛け合わせて、さらに地域を特定するということも行われているようだ。

画像


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※元論文はこちら
New isotope data on Maya mobility and enclaves at Classic Copan, Honduras
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0278416514000154


この研究は、おそらく人骨がそう古くない中米の文明だから適用できるのだと思う。対象となるマヤ文明は古くても今から1500年くらい前なので比較的新しい。古代エジプトだと5000年前から2000年前くらい。おまけに残ってる遺体は化学薬品を使って防腐処理されているので、このテの分析にはあまり向かない。

あと、旧大陸はそもそも人の移動範囲が広範囲に渡るから、移動の証明なんかが難しいんだろうなぁ。
遺伝子解析は見たことがあるが、同位体分析はオリエント周辺ではあまり見かけないんだ。



*****

これら骨に残る成分の分析は、掘る考古学とは別の切り口から昔を知るこのとの出来る新たな視点となっている。技術的な限界もあるが、発掘だけでは判らない事実を明らかにする可能性を秘めている。

ただ、今の日本の学者さんたちの動きを見ていると、一つ懸念事項がある。
それは、「コパンの王権はティカルから来たに違いない」という前提を元にして調査が行われているように見えることだ。


仮説を立てて、証明のために実験や調査が行われること自体は、科学的手法として問題ない。だが、「〜ではないだろうか」という仮説が「〜に違いない」という確信に変わったとき、その意識は、結論にそぐわない情報を見落とすリスクへと変わる。

発掘調査のオキテは、「特定の何かを見つけようとして掘ってはいけない」なのだと、その昔出た別ジャンルの講演会の先生は言っていた。自分の見つけたいものを見つけるのが発掘ではない、結論ありきで発掘すると必ず誤る。というのが、その先生の談だった。私もそれに同意する。

ちょっと論文の端っこを読んでみただけなのでまだ何ともいえないが、研究者の初歩として、結論ありきで仕事は進めないで欲しいなーと思う。

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