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zoom RSS 太平洋戦争時代のパラオ研究書…「パラオの神話伝説」

<<   作成日時 : 2015/06/19 00:10   >>

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ふらりと立ち寄った古本屋(以下略
隅っこのほうに積み上げられてた本に「フォオオ!」って惹かれて買って来てしまったこれ。「パラオの神話伝説」。

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奥付見ると昭和17年発刊となっている。開戦初期。そして下に「2000部」と小さく書いてある。お値段は2円80銭。よく残ってたなぁという感じの本だ。古いわりにしっかりしてて、大切に読まれてた感がある…。

さてパラオ、周知のとおり太平洋戦争前は日本領土であり、終戦時には日本に所属したいという希望もあった国。この本は開戦直後に出ているので、まだパラオは日本領なのだ。だから本の趣旨は「わが国の一部だけどあんまり知られてないパラオの神話について紹介するよ」という内容になっている。

はじまりの言葉はこんな風になっている。

"南洋群島が皇国の治下に属してから満二十四年になった。ドイツがその大部分をイスパニア(スペイン)より譲り受け、領有十五年でこれを失ったのに比べて八年長いだけだが、経営の業績の差異に至っては、在留邦人の数 大正九年において既に四千に足らんとし、それ以来およそ五年ごとに倍化する勢いで激増した事がよくこれを説明する。"

本に収録されている神話は、昭和4年から6年の間にあつめられたものだという。島民の生活の変化は著しいと書かれているから、おそらく今では失われてしまった内容も多いに違いない。パラオの言葉に書き文字はない。巻末に、歌謡のような形態で語られる神話の書き写しがあるが、その筆写をいかにするか、ルールについても書かれている。アルファベットが使われているのは、要するに「知っている」という言葉を「Sitte iru」と書くような音写である。

考察などはあまりされておらず、集めたまま山もり突っ込みました! という感じのシンプルな構成だが、実に興味深い神話が多数収録されている。たとえば、人間はどうして有限の命しかもたないのかという説明。
人間は女神オボハヅを祖として生まれてきたのだが、女神が人間に石を飲ませようとしていると、テリーズ島がやってきて風を口の中に吹き込んでしまったのだという。石を飲めば永遠に生きられたものを、風を最初に飲み込んでしまったために、息が絶えると死ぬ体になってしまったのだという。テリーヅ島は誕生まもない人間の邪魔ばかりしている。なんなのテリーヅ島。どんだけ敵意あるの。オボハヅ女神はうるさいのでブチきれてテリーズ島の頭を思い切り殴りつけた。そのためテリーヅ島の頭は二つに割れた形をしているのだという。

子供のいないオボハヅ女神はたくさんヤドカリを飼っていたのだが、飢えた女の子たちを拾ったことでヤドカリがいらなくなり捨ててしまう。ヤドカリたちは悲しい歌を歌う。

釣りに行くと海から魚とバナナが釣れる。

妻を得られなかった青年が石の道祖神の目を取ってしまうと道祖神が喋らなくなるという神話などは、イースター島のモアイの眼が魔力の源と看做されていたことと繋がっているようにも思われるて興味深い。

オルギースという大睾丸の持ち主の話は、たくさんのバリエーションがあるらしいが、パラオでは睾丸の大きなことが金持ちの象徴だったようでなかなか面白い。家に入れないほどの大きな睾丸を持つ皮膚病の男だが、金持ちなので女が嫁にしてくれとやってくる。男は受け入れて、睾丸の下に隠していたお土産やごちそうを出してくれる。ヨーロッパの神話では財宝があるのはドラゴンの体の下というのがお約束なのに、パラオでは睾丸の下に宝物が隠されているのだ。

神様たちはたくさん出てくるが、名前以外の役割はよくわからないものが多い。ただ、島の神格化や、天、星、ウミガメ、魚など、自然界にあるものが神様になっているあたりはインディオやイヌイットの神話に雰囲気がよく似ている。

途中スペインやドイツの支配下を経ているから、どこまでが元の神話で、どこからが新しく西洋風に付け加えられた部分なのかはわからない。だが、パラオの神話はどこか優しい。結末はだいたいハッピーエンドだ。

ギリシャ神話のパンドラは、開けてはならない壷を開けて絶望を解き放ってしまうが、パラオ神話のイルロイが開けてはならない巻貝を開けてみるのは故郷の村の様子で、イルロイが帰りたがっていると神人は彼女にお土産まで持たせて天から返してくれるのである。

70年も前の本なのに、今読んでも中身は何も色あせていない。
調べてみると、最近になって復刊されたものもあるらしい。アジアの神話伝承が好きな人はぜひ手にとって読んでみてほしい。

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