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zoom RSS ワインとビールの考古学 とあるシンポジウムに行ってきた。

<<   作成日時 : 2014/12/10 00:10   >>

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こないだ紹介したこれに行ってきました。

前日が残業からの忘年会参加で日付変更付近に帰宅、翌日はコンビニで水と酔い覚ましを買うところからなのに当日は一日酒の話を聞き続けるという、なんつーかアレな感じでスタート。今回は一般人多かった感じ。たぶん。駅前で会場への行き方わかんなくて地図と睨めっこしてた親子連れの人とかいたし。

会場に来てるのは、やっぱりご年配の人が多かったけど、学生さんっぽい若い人とかもいて男女比率も半々くらい。内容は専門的なところもありつつ、そこまで難しくもない感じ。講演者も専門用語はあまり使っていなかったと思う。各パート30分で歯切れよく進んでたので、中だるみすることなく完走できました。

というわけで、忘れないうちに気になったところとか後で調べるところとかメモっとくよ!

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@西アジアから現代への贈り物−平原のビールと山のワイン

最初は世界のアルコール消費量比較からスタート。ビールやワインが最も古い時代から作られていた西アジアから北アフリカのあたりが、今はイスラム圏でアルコールに厳しくなっているため、世界で最も消費量の少ない地域になっているという図を見てほほうと思ったり。ちなみに世界で一番アルコールを消費しているのはやはりおそロシアさんだった。デスヨネ。

アルコールの語源はアラビア語で、「Al-Khwl」で、酒の故郷は酒を示す言葉の故郷でもあるのだとか。

かつて、「小麦は酒をつくるために生産されはじめたのだ。」という説がマジメに唱えられたことがあり、AAAによって「Did man once live by Beer Alone?」(人はビールのみによって生きるや?)というタイトルの会議が大真面目に開かれたという。結論として「やっぱ小麦は最初はふつうに食うために作ったんじゃねーの」ということになったらしいが。

ちなみにかつては、ビールづくりのほうがワインづくりより早くから始まっていたと考えられていたようだが、今では逆にワインのほうが古いと考えられてきているようだ。ワインづくりは葡萄を潰すだけで発酵するのでより簡単だという。ただし証拠となるワインづくりの遺跡が見つかっていない。

古代にはワインの名産地として輸出もしていたシリアの現代のワインが「最低でひどい」と試飲の感想を仰っていたのには笑った。ちなみにシリアビールのほうは「まあまあ」らしい。

講演者は酒が好きなんだなーということがよく分かった(笑



A古代エジプトのワインとビール

内容的には古代エジプトのビール・ワインの概要がほとんど。シリア・レバノン方面からの輸入ワインは高級品だったが、エジプトでも地産のワインはあり、ツタンカーメン王墓などからもエジプト産ワイン壷が発見されている。
西アジアの壁画ではビールはストローを使って飲んでいるが、エジプトの壁画では壷から直接ストローで飲んでいるシーンはあまりないようだとのこと。

発掘中のビール職人の話については以前記事にしたので省略。今年12月からまた発掘再会らしい。
ていうか、あの朝日カルチャーセンターでの発掘内容報告の時に、このエジプトビールについての概要を入れてほしかったです、先生(´・ω・`) 


B楔形文字文書にみるメソポタミアのビールとワイン 

メソポタミアではぶどうは自生しておらず、ワインはもっぱら輸入に頼っていたこと。
シリア方面よりはザグロス山脈のほうが近いのでそっちから主に輸入していた。

メソポタミアではビールが非常に重要で、庶民の飲み物として様々な種類のビールが作られていた。70種類もあったという説があり、さすがにそれは多すぎるが数十はあっただろうと。エンマー小麦のビールは「黒ビール」と表現されており、現在のドイツビールのような色合いをしていたと考えられている。
楔形文字文書ではビールは「甘い」と表現され、甘いビールほどよいビールとされていたようだ。

古代におけるボルドーはIzalla、ワインの名産地としてメソポタミアに多く輸入されていた。
メソポタミア地域でのワイン消費は時代とともに増えていくが、現地生産されない輸入のみだったため「高級品」という立ち位置は変わらないとのこと。

ここでポイントが一つ。
メソポタミアのビールの醸造方法はこうなってる↓

ビールパン(bappir)とモルト(munu)を一緒に水に溶いて合わせ、ビール原汁(sumun)を作成。
その滓(titab)を乾燥させてビール種(dida)を作り、地面にそなえつけの先のとがった壷の中で水に溶かしてさらに発酵・醸造。

乾燥させた「ビール滓」を水に溶かすっていうところで「???」になった。エジプトのビール醸造法にこの行程はない。ていうか現代でもこんなのやってないはず。なぜいったん水分を飛ばすのか。固形化させるまで乾燥させるのか、どろどろの原液にするということなのか。後者ならまだ分かるが…?
エジプトでいうところのサワードウを作るっていう行程なんだろうか。

ここがよく分からないので後で調べる。



C古代エジプト先王朝時代のワインとビール 

発表内容的にはほぼ↓これのサマリー。

古代エジプト文明最古のビール醸造址−その醸造方法と社会的機能を探る−
http://www.asahigroup-foundation.com/academic/support/pdf/report/2009/09.pdf

古代エジプトでは、文字の未発達だった先王朝時代にはビール工房の遺跡があるが、逆に文字記録の出てくる王朝時代にはビール工房の遺跡が見つかっていない。現在見つかっている世界最古のビール工房跡がヒエラコンポリスにあるこのレジュメの遺跡で、今から6000年近く前のものになる。

古代世界で酵母をキープすることは難しく、すぐに死んでしまうため乳酸とセットで保管する必要がある。それがサワードウと呼ばれる酸っぱいパン生地だとのこと。
この話で紹介された石田先生の論文がコレで、以前キリンビールの古代ビール再現実験について疑問を感じて調べていたときに少しだけ触れてはいたものの本体が読めていなかったもの。もう一つ紹介されていた吉村氏のほうはオンラインには無かったので未確認、図書館にあるので見てくる予定。

こんかい石田論文を読んでみて、今になって、あのときキリンビールのサイトを見て「いやこれちげーだろ」とツッコミを入れた部分が、悉くサイト上の表記間違いだったことを知って頭を抱えた。解釈ミスってレベルじゃねーぞ! この件については後日まとめまふ…。


ちなみにかつては、先王朝時代のパンやビールには大麦が多く使われていたのではないかと言われていたが、今は、既に先王朝時代からエンマー小麦が多かったことが成分分析で分かっているという。

ビール製法は一種類ではなく、テル・エル・ファルカのビール工房では壷にビール原液を移してから酵母を添加していたが、ヒエラコンポリスの遺跡では原液を入れていた大壷の中から酵母と乳酸菌が出ており、おそらく直接入れていたのだろうとのこと。

エジプトもぶどうが自生しないので、ワインはもともと外来の飲み物だが、アビドスのU-j墓からは大量のワイン壷が見つかっている。このワイン壷、調査したドイツ隊は外来(レバノン産)だと考えているが、壷自体の調査結果ではエジプト産と出ており、講演者はナカダ末期にはワイン生産技術が入ってきていたはず、と考えているようだった。



D旧約聖書に見られるワインとビール 

人類ではじめてぶどうを生産したとされるノア、そして初めてのヨッパライ。(※あくまで旧約聖書内の話だが。)
アルメニアはワインが生産された最古の地域の一つとされているが、ノアの箱舟の到着したとされるアララト山はアルメニアのすぐ側にある。ぶどうの生産に関する神話は、実際のぶどう栽培の開始の記憶と結びついているかもしれないという話。

旧約聖書の中にはワインは何度も登場するがビールという単語が出てこない。が、「強い酒」や「新しい酒」などと訳されている「Šekhar」(シェカール)は、同系のアッカド語では「Šikarum」(ビール)と同定できるため、ビールを指すと考えていいかもしれないとのこと。

なぜシェカールをビールとしなかったのかについて、ギリシャ・ローマ人はワインを好み、ビールを下賤なものと考えていたためではないかとのこと。



Eヒッタイト帝国のワインとビール−古代アナトリアの飲酒文化−

文字記録は紀元前2000年紀にならないと出てこない。アッシリア商人との共生時代にアッシリア承認が書き残したものが最初。ヒッタイトにはビールに関する言及がたくさんある。
ウル・ブルンの沈没船からはビールを飲むさいに使うストローが出てきている。ちなみにウル・ブルンの船が沈んだのは、過積載にくわえビールを飲みながらの飲酒運転だったためで、沈んでも致し方なかったんじゃないかとかなんとか(笑)

アナトリアは元々ぶどうが自生しているので古くからワインを製造していた可能性あり。ワイン作りについてはアナトリア東部(アララト山のあたり)が起源とする説もある。→これは旧約聖書の話でも出てきたとおり
ただ工房などの物的証拠はみつかっていない。

ヒッタイトの神話でイルルヤンカシュという竜に酒を飲ませて倒す神話があるが、竜や蛇に酒を飲ませる同様の神話は世界中にある。竜は川のイメージであり、酒造りには水が大事であることからではないかという説。
(そういやエジプトでは酩酊させられるのはセクメト女神なんだが関係ないのかな… 天の雌牛=天の川ってことなのかな…それだとちょっとこじつけが厳しいなーとかなんとか)

途中のパネルに出てきた天候神のお使いで戦車を引く牛の名前がなんだったか思い出せないので、あとで本調べとく。確か写真はどっかで見た気がするんだ。



F植物考古学からみた古代のお酒

古代の酒の見つけ方、いかにして遺物が酒かどうか判別するのかという科学的手法について。
ぶどうの果実だけ見つかっても、ただ食べていただけかもしれないので酒を造っていたとはいえず、麦芽は必ずしもビール作りと結びつくとは限らないため、それだけでは根拠とならない。容器からの酒石酸の検出が一つの大きな証拠になるという。ただ、ビネガーやジュース、シロップなどでも同様の検出はされる。

古くから始まっていたはずのワインづくりの証拠が見つかりにくいのは、製造工程に火を使うことがなく、植物の痕跡が炭化しないので残りづらいからだという話は目からウロコだった。確かにビールは製造工程に必ず火を使うが、ワインはただ潰すだけなので火は要らない。はっきりと残っているローマのワイン工房の跡が、偶然工房が火事になって炭化したからだという話もあった。
ただビールづくりもほうも、麦芽は脆いので見つかりにくいということだった。



G醸造学から見た古代西アジア・エジプトのワイン

昔と今のワインづくりの違いで、昔は房を丸ごと潰していたが、今は葡萄の柄の部分は風味を上げるために入れないとのこと。また現代では、亜硫酸で殺菌、酸化防止している。

酸化防止をしていなかった古代のワインは酸化が早く、白ワインは茶色く濁っていただろうとのこと。また赤ワインも茶色がかった赤紫色で濁っていたはずとのこと。発酵の気温が高く、密閉された瓶にガスを充満させるようなこともしていないので、現代より酸っぱくなるのが早かった。
古代のワインは酵母が早く発酵を負えて死んでしまうため、アルコール度数はそんなに高くなかっただろうとのこと。

古代エジプトでは硫黄を燻して亜硫酸にして現代と同じような殺菌、酸化防止をとっていた。
松脂を入れて防腐剤にすることもあれば、薬剤を入れて薬用養命酒的な使い方もしていた。

現代はワインを工房で一律で作ってしまっているが、それだけではいい風味は出せない。古代の方法に少し近づけたほうが、より複雑で奥深い味わいを楽しめるのではないかとか、シャトーメルシャンの人らしいワイン談義で終了。

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あと質問タイムに出ていた質問への回答で気になったのはこれ↓

古代シュメール語では「ぶどう」と「ぶどう酒」が区別されていないため、その単語が文献に登場したことだけでは食べ物としてのぶどうなのか、酒(ワイン)なのかが分からないという。

メソポタミアはエジプト同様、ぶどうは自生しておらず、ぶどう作りにも適さないためワイン作りは行われておらず、すべて輸入に頼っていたという話だが、じゃあ逆になんでエジプトは自国内で製造したんだろう? という疑問も。輸入元がシリア・レバノンならめちゃくちゃ遠いってわけでもなし。

メソポタミアでのワイン消費量は年々上がっていくので、輸入元のザグロスやシリアでのワイン生産量は年々上がっていったはずだ、という話も気になった。ぶどうって成長するのに柿くらいの年月かかるはずなんだけど…。気長に畑の面積増やしていったんかな、急に生産量増やせっていわれても無理だよね多年生作物は。


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メモ内容のまとめは以上。


なお次回は1/31 名古屋会場で開催だそうです。
シャトーメルシャンの人以外はメンバーチェンジで内容も一新!

https://www.facebook.com/events/727131224014316/?ref=5

11:05-11:35 ワインとビールの起源と展開 小泉龍人(国士舘大学)
11:35-12:05 古代エジプトのワインとビール:初期のワインとビール 高宮いづみ(近畿大学)
13:00-13:35 古代メソポタミアにおけるワインとビールの文化 渡辺千香子(大阪学院大学)
13:35-14:10 古代エジプトの葬祭施設に見られるワインとビール:古王国から中王国時代にかけて 中野智章(中部大学)
14:20-14:55 東地中海世界のワインとビール:古代と現代を結ぶ「お酒」 西山伸一(中部大学)
14:55-15:30 ワイン交易と古代地中海世界 周藤芳幸(名古屋大学)
15:40-16:15 考古植物学からみたワインとビール 丹野研一(山口大学)
16:15-16:50 醸造学から見た古代西アジア・エジプトのワイン 上野 昇(シャトー・メルシャン)

なかなか面白かったのでお近くの人は是非。



#参加者が多くて盛況だと次回予算が取り易ゴニョゴニョ
#無料でこれだけ聞けるってあまりないんですよ!

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