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zoom RSS 13世紀ドイツ語アーサー王伝説/ウルリヒ・フォン・ツァイクホーヘン「ランツェレト」

<<   作成日時 : 2014/05/06 00:10   >>

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そういやランツェレトちゃんと読んだことねーな、ってなわけで、ツァイクホーヘンの「ランツェレト」を発掘してきた。邦訳がお手ごろな本として出てます。

湖の騎士ランツェレト
同学社
ウルリヒ・フォン ツァツィクホーフェン

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ただし、これ。
通読するのはかなりの苦行であるとゆっときます、ええ…。訳者がかなり頑張ってるのは分かります。日本語の語尾を古めかしくしてたり、韻を踏ませてたり、原文もこういう雰囲気なんだろうなと思いながら読めます。でもストーリーが冗長な上に単調なんだ(´・ω・`)


文体はハルトマンのように整然明晰ではなく、ウォルフラムのように複雑晦渋ではなく、ゴトフリートのように流麗でもなく、コンラート・フォン・ヴュルツブルグのように装飾に徹することもない。経緯を淡々と、素朴に、即物的に述べる。宮殿の豪華さや装束の美しさの描写では時として繊細に亙(わた)ることもあるが、登場人物の心理描写等を繊細に行うこともほとんどなく、一般には、あまり凝った表現をしない。


と、訳者が巻末で述べているように、ほぼ同時代と思われる他の著者たちの作品からは、芸術面において一段下がるものとみなされている。しかし多くの写本が残っているからには書かれた当時ウケたことには違いなく、「その時代、どんなアーサー王伝説が存在したのか」「人々は何を知っていたのか」を考える上では重要な作品となっている。

さてこの作品が重要視されるのは、タイトルとなっている「ランツェレト」が、円卓の騎士ランスロットのことで、その生涯が詳しく語られている最初期の物語になるからだ。だが、「ランツェレト」に登場するランスロットは、同じクレティアンの「荷車の騎士」(= ランスロットというキャラクターが性格づけされた主人公として最初に登場する作品、よく知られているのはこちら)とはまったく異なる。乱暴者で、好色で、共通点を探すほうが難しいくらいの別人となっている。

 ・信心深くない
 ・やたら女に絡む
 ・最高の騎士ってことになってるけどガウェインのほうがかっこいい
 ・グウィネヴィアとの関係が薄い
 ・聖杯なにそれおいしいの

その理由は、実際本編を読んでみて分かった。これはたぶん、ハルトマンとは全然関係ない作品だ。
自分には、クレティアンよりもあとの作品、ヴォルフラムの影響を強く受けているように思えた。成立年代には諸説あるようだが、おそらくヴォルフラムの「パルチヴァール」よりも後ろの時代に成立して、ドイツ語作品の影響を受けてるんだろうなと。

物語の流れは、ガウェインとの関りも含め大枠では「パルチヴァール」のものを借用し、グラールを「石」と表現するところ、様々なアバンチュール(冒険)を越えてクライマックスでは妻とともに国を相続してメデタシメデタシ、という流れまで、ほぼそのまま。

アーサー王の宮廷が、現在はフランス領のブルターニュになっている以外、フランスとの結びつきを感じる箇所は少なく、内容はケルト的で、「マビノギオン」のアーサー王伝説の直系と見なすものではなかろうか。クレティアンの作品の後継とは思われない。いちおう最初のほうで湖の精に育てられたいきさつは出てくるが、のちの「湖の騎士ランスロット」の面影があるのは、そこくらいだ。


そしてこの「ランツェレト」の主人公、女癖が悪いというか、なんというか、… うん、 前半エロゲ展開なんだよね。

開始10ページで実の母親がリンカーン。
妖精の国を出たあと泊まりに行った城で好色な姫様が逆夜這いに来てチョメチョメ。
とある城では城主の挑戦に打ち勝ったあと城主の娘とチョメチョメ。
失礼をかましてくれた城に乗り込んだら熟女女王に捕らわれて愛人として囲われ生活。

 お前一体なんのために冒険に出た。(笑)

いやーもうね、旅立ちのとき妖精の女王に言われた「イーウェレトを倒しなさい…自らの素性を知りたければイーウェレトを倒すのです…」っての、もう完璧に忘れちゃってるだろこの人、って、なまじ話長いから前半1/3くらいでツッコみまくりでしたよ。まさか後半戦になるまで本題に入らないと思わなかったよ。ガウェインとかトリスタンとかケイとかア円卓メンバーいろいろ出てくるけど、ほんとチョイ役で別に居なくてもいいような。おまけにこのランツェレトはアーサー王の妃すなわちグウィネヴィアに全く靡かない。ていうか王妃も気にしてるそぶりない。ランツェレトは最後に宿敵イーウェレトの娘イブリースと結婚して幸せハッピーエンド。エレイン? 影も形もありませんでしたが!

ランツェレトがあまりにアレすぎてガウェインさんの紳士ぶりに安心してしまうという謎の現象が。
たぶんヴォルフラムのパーシヴァルの未熟さ、天真爛漫さを悪い方向にアレンジしちゃったんだろう…。
うん、芸術性で劣るといわれるのはしょうがない、が、低俗さは確かに庶民好みである(笑)




というわけで結論、この物語をもってランスロット本来の伝説が残っているという説には同意できない。

ランスロットがクレティアンの創作したキャラクターではなく、アーサー王伝説に組み込まれる以前すでに彼に関する伝説がフランスにあった、という可能性は認める。ランスロットの起源自体はフランスでいいと思う。

しかし「ランツェレト」は、ケルト由来+ドイツ語のほかの作品の影響下にあって、オリジナル要素はほとんどなく、色んなところから切り貼りしただけの冗長な同人誌に過ぎないと思う。この物語の中でランスロットに関して述べられている「確実にセンスロット固有である」と思われる要素は、結局のところ、クレティアンの書いた「湖の貴婦人に育てられた」という一点のみしかない。

物語の末尾に「フランスの書物から筋を取った」と書いているのは、当時の作品によくある、権威付けのための吹聴であって、ヴォルフラムのいう「キオート」のようなものだからアテにならない。
仮にランスロットに関する伝説が、この時代にフランスに存在したのだとしても、「ランツェレト」の中には組みこまれていないだろう。



****

と、ここまでマジメに書いておいてオチがアレなんですが、前半のエロゲ展開が某アリ○ソフ○のエロゲ「ランス」シリーズのアレだなと思ったんですよね。あ、いやプレイしたことはないんですよ。人伝えに筋を聞いただけですよ。そうかー城を攻め落としては美女城主と…そうかー伝説というのはこうして時代を超えてリバイバルされていくものなんだなー、と神妙な面持ちで最もらしいことを言ってみる。









いや、ほんとにやってませんよエロゲは。

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