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zoom RSS 中世フランスの騎士道精神、そのお約束と概念の形成。

<<   作成日時 : 2014/01/15 00:10   >>

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図書館で借りっぱにしてた人は反省するように。というわけでシドニー・ペインターの「フランス騎士道 中世フランスにおける騎士道理念の敢行」を漸くゲット。やや難しいけど、これが面白い。

フランス騎士道―中世フランスにおける騎士道理念の慣行
松柏社
シドニー ペインター

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【要約】

・「騎士道」という概念は、一度として明確になったことがなく、統一されたこともなかった。

 →貴族による「封建的騎士道」、教会による「宗教的騎士道」、貴婦人たちによる「宮廷風騎士道」の3つの互いに相反する要素が存在する。

・騎士道物の文学の著者たちは、それぞれ異なる「理想の騎士道」を持っていた。

 →上記、3つの相反する要素のどこに主軸を置くか、どのように融合させるかは人による。

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「一度として騎士道という概念が統一されたことはない。」というのは、言われてみてナルホドと思った。共通の教科書も無ければ、当代の指針となる代表的な作品もない。流行りものの文学作品くらいはあっただろうが、それも全ての人を納得させるだけの力は持たなかった。同時代に書かれたはずの作品間で、登場人物の騎士たちが取る行動に大きな違いがあったりするのは、ここらへんに関係してそう。

騎士道を構成する三つの要素は、以下の様なもの。


「封建的騎士道」

何よりもまず武勇と名誉を優先する戦士としての騎士。「武勇」「礼節」「気前の良さ」が要求された。
15世紀以降、弩、長弓といった武器が騎士の装備を無効化し、歩兵が重装騎兵を凌駕する時代になるに至り、この騎士像は消失していく。

代表例=ウィリアム・マーシャル


「宗教的騎士道」

教会の唱える「神の戦士」としての騎士。封建的騎士道でもてはやされた一騎打ちを含む私闘の類は好ましからざるものとし、異教徒に対する戦いのみを肯定する。また、騎士の第一の役目はカトリック教会に従い、防衛することであると考える。

代表例=聖杯探求のガラハッド


「宮廷風騎士道」

貴婦人たち主導で形成された、優雅で紳士的な騎士。貴婦人たちにかしづき、理想の恋人として振る舞うことを求められた。
吟遊詩人と、その庇護者であった奥方たちによって編み出された概念で、のちに「戦士」が「紳士」へと変化する下地になったとも考えられる。

代表例=荷馬車の騎士ランスロット



まず相反するのが荒々しい「封建的騎士道」と教会の唱える「宗教的騎士道」。
本来の騎士は、ゲルマン時代の戦士からの発展であり、戦うことが本分なので、封建的騎士道は最も基本で古典的な騎士の形と言える。
しかしそうした荒々しい騎士たちの、時に野党まがいの行動はカトリック教会の望むところではなく、倫理観と信仰心を植え付けて制御するために「宗教的騎士道」という概念を布教するようになっていく。

物語の中で戦闘に明け暮れる騎士たちが、ときおり取ってつけたように神への敬意を口にし、教会に祈りに行くのは、人殺しを生業としながら神への恭順も示さなければならない事情の現れといえる。


次に相反するのが「宗教的騎士道」と「宮廷風騎士道」で、貞節であれという教会の教えに対し、宮廷風の騎士たちは美しい貴婦人たちに次々とかしづき、その愛を求めることに奔走する。宮廷風の恋愛は、結婚相手を求めることではない。婚姻は嫡子をもうけるための手段でしかなく、恋愛のあとに行われるものではなかった。むしろ婚姻と恋愛は同時に成立しないというのが、だいたいの宮廷風恋愛の概念となっている。

だから、教会の教えに従って高潔であろうとするガラハッドは結婚せずに童貞のまま死なねばならないし、宮廷風恋愛に見を貫かれたランスロットは、王妃との不正な恋愛に生きることになる。


相性がいいのは「封建的騎士道」と「宮廷風騎士道」で、貴婦人の求めに応じてドラゴンや巨人を倒す騎士たちの物語は、この二つの組み合わせによって生まれたものだ。アーサー王物語のエピソードは、だいたいこのパターン。


このように、騎士道の概念を構成する要素のどれを主軸にして、どのように融合させるかによって物語中の「理想の騎士」像は変わることになる。
作者の好みや、パトロンの嗜好が物語の方向性をはっきりと決める例は、たとえばシャンパーニュ伯夫人マリに庇護を受けたクレティアン・ド・トロワなどに顕著だと言われる。女性パトロンであるマリは「宮廷風騎士道」だったため、彼女の意向を受けたランスロットは、そのために「封建的騎士道」の求める騎士の栄誉すら投げ捨てる極端な人物になった、というわけだ。

ただ、これら作品に登場する「騎士道」の概念が、当時の現実世界でどれほど受け入れられていたかはよく分かっていない。
あくまで物語の中の架空の騎士、とされていたのか。はたまた、そうなりたいと願われた理想像でもあったのか。相反する騎士の理想型がある中、妥当だと思える理想像を自分で決めることは難しかったのではないかと思われる。

価値観の多様化などと言われる現代だが、中世の騎士だって価値観の多様性の前で、どう生きるべきか悩んでいたんじゃないのかなあ。とか、そんなことも思ってみたりする次第。

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