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zoom RSS 「人の歴史を見てきた森」レバノン杉を絶滅から救えるか。

<<   作成日時 : 2013/10/19 00:10   >>

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レバノン杉、といえば、古来オリエントの伝承ではおなじみの存在である。

メソポタミアでは、現存する最古の叙事詩とされる「ギルガメッシュ叙事詩」に登場し、古代エジプトではクフ王のピラミッドの側から見つかった祭儀用の船の建材として知られる。ことに木材がとれるほどの立派な木が育つ気候ではなかったエジプトは、高級木材といえばレバノン杉で、はるばるビブロスまで遠征隊を送っては輸入していた。

しかしそのレバノン杉、現在はというと、実は絶滅に瀕している。
パピルスが原産のエジプトでナイル河流域から絶滅してしまったように、最悪の場合、いつかレバノン杉もまた、レバノンから消えてしまう運命なのか。

そんなことを思いつつ調べていたら、よさげな参考書があったので早速読んでみた。



レバノン杉という言葉は知っていて、遺物としての木材を目にしていても、生きているときの姿はすぐさま思い当たらないものだ。この本に載っている写真を見て、なるほど本場のレバノン杉とはこういうものなのか、と納得。確かに立派な木だ。しかもいい香りがするとなれば、高級品扱いで消費されまくったのも頷ける。

だが、その消費されまくった結果が、小規模なものもあわせてレバノン国内に13箇所しか森がない、という現状のようだ。前もってある程度知ってはいたが、あまりにも少ない。

画像


近所の村人が宗教上の特別な意味をもたせたりして、故意に守ってきたところ以外は軒並み森が消えてしまっている。古代エジプトの物語では、確かファラオに命じられた役人がビブロスへ杉を求めて旅だったはずだが…。ビブロスの港周辺にはもう、レバノン杉は無いんだな…。

ただ、残されているレバノン杉の中には樹齢6500年と言われるような古樹もあるようだ。まさに「人類の歴史を見てきた」生き証人だ。ギルガメシュがフンババ退治に森へ来た時のことも覚えているかもしれない。
植樹の運動もあるという。状況は厳しいようだが、道がないわけではない。

ちなみに、新宿御苑など日本の各地にもレバノン杉があるという。
言われてみると、あーあー、あのデッカい杉がそうだったのか… と、わかるが、現地のものとは似ていない。気候風土が木の育成に深く関わるので、レバノンの外で育ったレバノン杉は、独特の外見にならないのだそうだ。ワシントンD.C.の桜並木が、日本の桜と全然違う雰囲気になっているのと同じようなものか。


この本は、いくつかの章に分かれていて、レバノン杉を巡る話をいろんな角度から書いている。
レバノン杉の現状や伐採の歴史。レバノン杉を守るために日本から支援に言った樹医さんの話。同じく森林伐採によって植生を破壊してしまったイースター島の話から、森と人との共存まで。

しかし本の中でも述べられているように、レバノン杉の森と人類との出会いは、しょっぱなの「ギルガメッシュ叙事詩」の時代から既に"略奪"である。英雄ギルガメシュは森の番人フンババ(フワワ)を打ち倒して、森の木を伐採する。神々はそれに怒り、ギルガメシュの親友エンキドゥの命を奪ってしまう。「古き良き自然との共存の過去」は存在しない。人類は、ほとんどつねに森を壊す側として生きてきた。

レバノン杉の森を復活させることで、今度こそ、英雄は森の番人と和解できるだろうか。

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