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zoom RSS インカコーラ 〜ペルーのひどい旅紀行

<<   作成日時 : 2013/10/15 00:10   >>

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「インカ・コーラ」はバックパッカー旅行の旅行記である。

しかし読み始めてしばらく経つまで気が付かなかったが、登場人物はよくあるハミだした若者ではなく、教養と社会的地位のあるイギリス人の中年男性。巻末の説明によると、著者マシュー・パリスはサッチャー政権で七年間、保守党の上院議員を務めた、とある。政治家が、ホコリまみれになりながらインディオに混じってトラックの荷台の旅をするなんて、ちょっと想像がつかない。

旅のメンバーは四人。著者のマシュー・パリス、イアン、ミック、ジョン。
ミックは滑稽なほど高山病を恐れる50代の男性だし、ジョンはのっけから腹を壊してトイレと往復している。イアンはイケメンで子供や女性とすぐ仲良くなる特技もち。個性豊かな仲間たちと巡る、いまから何十年か前のペルー。そこは一言で言うと

 「どうしようもないほど ひどい」

世界だった…。


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この旅行記には、いわゆる観光名所のすてきな案内は、ほとんど出てこない。
マチュピチュにも行っているのに、そこの記述はすっ飛ばしている。熱心に書かれているのは、チキアンのような田舎の小さな町。リマやクスコは、文明世界を旅することに慣れた人からすると、あまりに原始的で「ひどい町」だ。
いまから何十年か前ということを差し引いても、バックパッカーということを抜きにしても、著者たちは随分とハードな旅をしている。そして、それらの一部は、正直に言えば今でも「あるある」な事柄だ。たとえば、今ではだいぶマシになっていると思うけど、リマの交通事情がヒドイところとか。

バスが「おぞましい代物」であるところは現代も一緒。アレを見て、事故が多いという新聞記事まで読んでいながら乗ろうだなんていう勇気は私には出てこないのだが、そこはそれ、男性4人のパーティだから出来るのだろう。(笑)

列車は時間通りに来るが、ローカル線はギュウづめ。そして電車の中で食べ物を売る地元の女性がいる。今は電車が停車するたびに窓という窓に群がってくる、という違いはあるけれど。バス停でトウモロコシを売ってる女性もいたなあ。

ごはんについての記述も、一部「あるある」だった。
幸いにして、私が行ったところでは腹をこわすほどマズいごはんには当たらなかった(むしろ旅行者むけのカフェは、だいぶオシャレなものが沢山あった)が、今でもある程度は危険度が残っている。生水がヤバイとか、薄いスープを飲んでたら中からニワトリの足出てくるとか、あるある。

それらを誤魔化し無く、美しいものは美しく、残酷なものは残酷に、体験したありのままを書くというのは、意外に難しいことだと思う。飾り立てている部分は、あまりない。夜中に軋むベッドも、石油と一緒にトラックに積まれて山をこえるおぞましい道も、トイレと呼べないようなひどいトイレも、大げさに書き立てることもなく、美化することもなく、淡々と、多少は皮肉っぽく、ややコミカルに書き連ねてある。

しかし、「とにかく酷い」と評されながら、本の中に描かれたペルーは魅力的で、旅人の愛情が感じられるのである。
あっというまに青年期を終わり、老いてゆく少女たち。ひどく無気力で悲しみに満ちた物売りの女性たち。
しかし彼女たちは世界を美しいと思い、アンデスの山並みに、暮れゆく太陽に、純粋な喜びを感じることが出来る。

リマとロンドンはどのくらい離れているのかと尋ねるインディオ。山奥のちっぽけな町に「車が6台もある」と誇らしげに言い、車を見るために町へいくと語る、さらに山奥の村の住人たち。
それは「昭和」と聞いて思い出す奇妙なノスタルジックさと似ているかもしれない。

インフレは終わり、フジモリ大統領が就任して失脚し、通貨も変わり、リマの町からはトタンのみすぼらしいスラムが取り払われ――本の中に書かれたペルーは、今はもう随分と変わってしまった。
私の辿った道や使った交通手段は、バックパッカー旅行とはいえ、かなり観光客むけに特化されたものばかりで、この本ほど本格的な旅行はしていない。ただそれでも、同じ町に滞在し、同じものを見ている部分はある。

市場の雑然とした感じ、貧しい人々の住むトタン屋根の区画、疲れ果てたようにものを売る女性たち、札をごまかそうとする両替屋たち。

そうした部分を探しては、自分の見た「現在の」面影を、「過去の」中に探しながら読んでいた。
そして、自分が見そこねてしまった、「本当にひどい」けれど「喩えようもなく美しい」もの――を、いつかまた、見に行ってみたいと思った。

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ペルーぶらり旅まとめ
http://55096962.at.webry.info/201308/article_6.html

一週間しか時間がないと、あんまり地方都市とか回ってる時間がとれないよね…。
スペイン語も話せないし。
いつも、「もうちょっと冒険ができたらな」って思う。

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