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zoom RSS 幻想の古代史 ―「人はなぜ偽考古学に騙されるのか」、「考古学者はなぜ捏造をするのか」

<<   作成日時 : 2011/06/19 00:10   >>

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いつまで経っても下巻が図書館に返却されないので、ついカッとなって上下巻あわせて購入してしまった。買って後悔はしない本なのだがハードカバーなのでまた本棚のスペースががが。近所の公立図書館から下巻を借りて行った奴は反省するといいよ!

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と、いうわけで「幻想の古代史」。
著者はアメリカの人類学者ケネス・フィーダー。訳者の福島洋一氏は、「古代文明の謎はどこまで解けたか」シリーズも手がけてあり、安心の組み合わせ。

この本は「捏造された古代史」をテーマにしている。だが、よくある捏造された考古学史料やオーパーツと呼ばれるものについての解説・暴露本ではない。人はいかにして誤るのか、騙す者と騙される者との考え方や行動原理についてをテーマにしている本である。

たとえばオーパーツと呼ばれるもの、エジプトのデンデラ神殿の地下室にある絵を指して、「これを『電球だ』と言い張る人はいる。だが、電球だと言いながら発電施設のことまで頭が回らないのはどういうわけか。」などとツッコみを入れるのは容易い。しかし、それでは意味がない。「オーパーツなのだ」と言われてアッサリ信じる人も、「いやオーパーツではない」と言われて手のひらを返す人も、結局は他人から与えられた答えを鵜呑みにする人という意味では違いがないのだから。



この本は、回答だけを与えることをよしとはせず、捏造に惑わされない考え方を読者に伝えることを目的としている。難しい話ではない。科学的に、客観的に、自分の頭で考えろ。というだけのことだ。
しかし同時に、著者はこうも言っている。

 「人は信じたいものを信じる」
 「科学が迷信や疑似科学を駆逐する日は来ないだろう」

その通りであって、人間はどこまでいっても人間である。注意不足から、またごく自然に、偽られた情報を受け入れてしまう危険性を孕んでいる。
多くの場合、個人が迷信や疑似科学を信じることは他人に害を及ぼさない。だが、ヒトラーのアーリア人優位信仰は多くのユダヤ人を殺害したし、前世紀末には世界の終りを信じたカルト教徒たちが集団自殺した。誰も訂正出来なければ、誤解はより大きな誤解をうみ、人種差別や破滅的な思想へ繋がる可能性もある。広められた情報が誤りと知っている者が、それが誤りであることを指摘する努力を止めてはいけない。

この本の上巻には、アメリカの学生を対象に「ツタンカーメンの呪い」を信じている人がどのくらい存在するかを追跡調査したグラフがある。CTスキャンによるツタンカーメンのミイラのスキャンや、遺伝子解析による新たな事実の判明などニュースが相次いで関心が高まったせいか、ここ最近のグラフは落ち込んでいる。しかし過去の傾向からして、また10年もすれば、呪いを信じる学生は増えていくことが予想される。間違っていることは間違っていると、繰り返し言い続けなければならないのである。それでも完全に誤解は解けないかもしれないが、だからといって理解してくれない人をバカにしたり、諦めたりするのは間違いだ。

日本ですら、「どうせ正しいこと書いてもウケんだろ」的なことを言う考古学者の卵の人がいる。(だからウケ狙いでとんでもないことを言いだす吉村作治のような人も許容範囲らしい。) その結果がどうなるかは、無関心が引き起こした誤解スパイラルの果ての悲劇の実例を見ればわかる。




ちなみにこの本、上巻は、先に挙げた「科学的な考古学証拠の検討方法」など理論的な話が多い。下巻は実際にその考え方を用いて、世の中に広まっている誤解の数々に解説を入れていくというもの。「デンデラ神殿の地下の壁画についての解説」のような、よくある捏造古代史の解説本に近い内容になっているのは下巻のほうだ。下巻だけが図書館に返ってこないことからしても、手っ取り早く「回答」だけ求める人が世の中には多いんだろうなぁと思う。

ぶっちゃけ、この本は一般ウケはしないだろうと思われる。想定している読者レベルも高い。書き手が分かりやすく一般むけに書こうとして努力は見えるのだが、専門家の学者が書いているぶん、文体が固いのと、段階を踏んだ説明がまどろっこしく感じられるのは避けがたい。古代文明全般や古代史にそれなりの興味を持っている人むけだろう。

だからこそ私は、この本を、日本の考古学者の卵たちに、まず第一にお勧めする。これから考古学を目指す人や、人文学をやる人にも。


そもそも私がこの本に興味を持ったのは、「捏造の歴史」の代表例として大きく取り挙げられているのが 日本の考古学者、藤村新一 だったからだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A7%E7%9F%B3%E5%99%A8%E6%8D%8F%E9%80%A0%E4%BA%8B%E4%BB%B6


当時の私は、まだ考古学そのものに興味はあまりいだいておらず、世界の神話シリーズを文学として楽しんでいる提示だったので、そのニュースにさほどのインパクトは覚えなかった。しかし今思えば、あまりにひどい。

藤村氏は、自ら遺跡に石器を埋め、あからさまな捏造を行っていた。しかし日本の考古学者たちは長年、その偽造を暴露せず、疑いもせずに受け入れていた。専門家集団が雁首揃えて大きな過ちを犯したのだ。有り得ないほど古い石器を差し出されていながら、それを疑いもせず、歴史の書き換えに応じた学者たちが沢山いたということだ。

「人は信じたいものを信じる」
この場合の「人」は、藤村氏の同僚だった考古学者たちのことだ。


ケネス・フィーダーは、日本の考古学者たちが騙された理由を、彼らが古代史を書き換える発見を欲していたからだと推測している。自国の歴史は古いほうが誇らしいし、より高度な文明をより早く発達させているほど、何となく自分たちが賢くなったような錯覚にとらわれるものである。

自分が信じたいこと、求めている証拠を提示されれば、人は無批判に受け入れやすくなる。それは一般人も考古学者も同じことだ。聖書を固く信じている人に「ノアの方舟の証拠」を差し出せば、その人は一も二もなく飛びつくかもしれない。日本で最初の石器が造られた時代は中国大陸の原人と同じくらい古いと信じたかったから、日本の考古学者は時代を捏造された石器に大喜びで飛びついたのかもしれない。
人である以上、誰であれ過ちは犯す。その基本メカニズムは同じものだ。

だが問題は、過ちは果たして教訓と成り得たかということ。
数十年にわたり、あからさまにおかしい証拠を受け入れ、捏造ではないかという批判を無視し続けた人間集団がいた。専門家を名乗るその集団の構成員は、今も存在し続けている。捏造を見抜けなかった者たちが、自分たちの力不足を棚にあげて一人に罪を押し付けるのであれば、今後も日本の考古学会は何度でも同じ過ちを繰り返す。プライドの高い学者ほど、過ちを真摯に振り返っていない感がある。


年寄りは頭が硬いかもしれない。
ある程度の地位を得た学者は他人の意見に耳を傾けないかもしれない。
ならば、今からその世界を目指す若い人たちに頼むしかない。二度と同じ失敗を繰り返さないために、捏造の「共犯者」にされないために自衛することを忘れないで欲しい。


地位や名声、金が絡めば 専門家であっても捏造はやらかす。


どんな一流の学者であっても、間違う時は間違う。何が正しいかは自分で判断しろ。そのジャンルに対し、自分で考え、判断を下すことのできる者が「専門家」のはずだ。




ちなみに、著者がアメリカ人いううこともあり、この本には日本人では思いつきもしないような宗教に根ざした「捏造」や「誤解」がいくつも紹介されている。アメリカ大陸に到達したあと、そこに住む人々が大洪水の被害を受けたか受けなかったかで論争になるとか、ちょっと意味がよく分からない…。で、聖書を信じる人は人間はぜんぶノアの息子の子孫じゃないといけないから、どうやって辿りついたのかで良く分からない説をひねり出してくれるわけだ。

他にも、レイヴ・エイリークスソンの魂を降霊する霊能者やら、「インディオがそんなに優秀だったはずがない」という差別意識からインディオの作った遺跡を宇宙人のものにしてしまう人やら、何だかもうてんやわんやである。こんなのにいちいち反論しなきゃならない考古学者ってのも大変だよなー、と、下巻は著者の愚痴を聞いてる気分になってくる。デニケンやハンコックがすごい嫌いなのはよく伝わってきた。それは私が吉村作治嫌いなのと同じ気持ちだと思う。(笑)
デニケンなんて学者には無視されまくってるのかと思っていたが、反論著述をしている学者が意外と多いのには驚いた。

あと、一時期、ナショジオチャンネルで聖書関連のネタを流しまくってた理由もなんとなく分かった気がした…。


この本は、参考文献や参考になるURLなどの記述が事細かで、自分で調べたい人を大いにサポートしてくれるはずなので、読んでみて内容が面白かったと思える古代文明ファンの人は持っておくといいと思う。URLはリンク切れまくってるが、末尾の出典元の本・論文リストはお役立ち。少なくとも図書館で借りて数ヶ月返さないほど気に入るレベルなら大人しく買え。(笑)

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