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zoom RSS NHKガッカリ特番:ツタンカーメン 王妃の墓の呪い(KV63) へのツッコミ各種

<<   作成日時 : 2009/07/26 20:50   >>

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前日からの続き
地上波での放送も終わった頃なのでネタバレ記事で再投稿します。
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自分ちにテレビないからって人様の家まで行って録画する外道な人がここにいますよこんにちは。
…いやお土産にケーキとか持っていくから。テレビは村の共有財産なんですよ!(←いつの時代だ)


と、いうわけで、NHKでやっている「NHKスペシャル エジプト発掘シリーズ」。ほぼ説の提唱者のサイトにあるFlash丸のまま転用してただけとはいえ構成はよかった第一集にくらべ、今週やった第二集はグダグダでした。早稲田の先生が王家の谷関連の番組に名前貸すとロクなことにならない気がするのは気のせいですか…。

エジプト発掘 第2集 ツタンカーメン 王妃の墓の呪い
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090726.html


この番組は、王家の谷で見つかった63番目の墓、KV63について取り上げています。
発見は2006年。ツタンカーメンがKV62で、63はその次。「80年ぶりに新しい墓が見つかった!」として、当時は大いに騒がれたりましました。ツタンカーメンの墓のすぐ近くで見つかったこと、中からツタンカーメンとほぼ同時代に作られたと思われる品が出てきたことなどから、ツタンカーメンの王妃アンケセナーメンの墓では? などという仮説も出たことがあったのですが…

現在ではアンケセナーメンの墓でも、キヤ王妃の墓でもなく、それどころか墓ですらない、

    ただの物置だった説 


が有力になっているという場所なのです…
物置というか、ミイラづくりのための道具を置いていたり、ミイラを一時的に保管したりする場所だったという見方のようですが。

それを番組は、「この墓はきっと、悲劇の王妃アンケセナーメンのものに違いない!」と最初から決め付けて作ろうとしてます。何も出てこなかったというオチを知ってる人にとっては、盛り上げようとしているナレーションが嘘くさくて逆に盛り下がるという番組に…。そらそーですよね。荒らされた墓! とかナレーションされてる場所が実は物置きだったり、一時保管場所だから雑多にモノ置いてるだけだと知ってたら、苦笑いしか出てきません。


おそらく番組製作スタッフは、発掘開始直後の情報だけ元に作り進めていたんだと思います。しかしそうだとしても、2006年末の時点で既に「これ墓じゃないっぽいよ」という情報は出てました。もちろんその説が今後覆る可能性もありますが、「現時点では」主流の説なので、一般の方むけの番組なら従うのが正解だろうと。何より、公共放送で不確かなことを勝手に断定するのは絶対ダメです。私には、最初から結論ありきの無理な構成で、現実には可能性は低くても、よりドラマティックに聞こえ、視聴者を安く騙せそうな説に飛びついたように見えます。
物凄くキツい評価ですが、個人サイトで乗っけるにしても調査不足なレベル。この出来なら放映しなかったほうがマシでした。なんか番組出来上がってから新事実が出てきて慌てて方向修正しようとした・結論をぼかそうとしたくさい演出が随所に見られて痛々しかったです。

とにかく前提からして間違えとるのですよ。いい加減、第18王朝にこびりついた一昔前の古いイメージは払拭されるべき。アクエンアテンの改革を「宗教改革」と言ってしまうのは視野が狭いっちゅーか頭固いっちゅーか、時代に乗り切れてないっちゅーか…。

ちなみにツタンカーメンの撲殺説も2005年に否定されました
要約すると、頭蓋骨の損傷はミイラづくりの際に出来たもののようです。頭の中に、穴にピッタリ収まる骨片が残っていました。もし死ぬ前に殴られて頭の骨が欠けたのだったら、骨片はミイラつくるとき脳みそと一緒に取り出されたはずです…。事故死か暗殺死かは断定できませんが、少なくとも撲殺死でないことだけは確かになりました。

なので、「悲劇の少年王」だの「呪われた王朝」だのいうキャッチコピー使う時点で古いのです。ピラミッドは奴隷にムチ打って作らせましたってイメージくらい遅れてます。過去さんざん「ツタンカーメンは暗殺された」とか「悲劇の少年王」とか盛り上げといて今さら間違いを認めたくない人がどこかにいるのかもしれませんが、恥の上塗りにしかならない気がします。


で、まあ…
実際はどーだったのかといいますと。

KV-63 ~ Newly Discovered Tomb
↑ココ見れば一目瞭然だったり

ドメインが kv63.com、この発掘プロジェクト専用のサイトっすね。
ここ見れば、二時間もかけて番組見る必要は無いという。
最近復元の終わったミイラ製作用の寝台も既に写真で出ております。ミイラづくり用の寝台+ツボに入ってたミイラ作り用の薬品と布+道具 と発見されたことで、ここがミイラ作りのために一時的に使われた部屋だという説がより強力になってきてるみたいです。

あとはココかな。News from the Valley of the Kings内のKV63記事

このへん読んでから番組作れば、たぶん1000倍マシなものが出来たと思う…。



ちなみに王家の谷の墓No、現時点でKV65まであります。
(62までしか載ってないけど、他の全リストは こちらのサイトに)
KV64と65は見つかったのが2008年で、去年の冬から発掘してるはずなんで、そこらへんも報告書探してみると面白いかも。




なお、この番組には、以下のような問題もあります。


●KV63に装飾がないのを例外と言っていた/その後アクエンアテンの墓の映像を流した

本来は装飾あるべきなんでしょうが。
王家の谷の墓って装飾ない墓も幾つかあるんですよ。KV5とかKV12とか。
途中放棄されたり、作るのが間に合わなかったりすれば壁は無地のままになる。アクエンアテンの墓のように「レリーフ自体は完成されたけど破壊された痕跡があって無地」なのと、「最初から描いてないから無地」なのは全然意味が違うんだから、ミスリードすべきではありませんでした。

※アクエンアテンの墓は王家の谷ではなく彼自身の築いたアマルナの都の近くにあり、じつは全部は完成していません&アクエンアテンがそこに埋葬された証拠はありません(娘は埋葬されていた)。この王様の本当の墓の墓はまだ学者さんたちが探してます。


●ツタンカーメンとアンケセナーメンを「幼馴染」、ツタンカーメンの「母親」をキヤと放送していた

以前ネタにした第18王朝の家系図参照
この図は一説にすぎませんが、ツタンカーメン、アンケセナーメン、キヤの三人が血縁関係にあるのは確か。ただし近親結婚のやりすぎで誰が誰の実母なのか、誰と誰が実の兄弟なのか、ハッキリしなくなってます…。「妹にして妻」とか当たり前、「祖母にして叔母にして妻にして第二妃の母」とかも在り得る世界です。
アンケセナーメンが「異母妹」だと言いづらかったのかもしれませんが、だったらここは、断定せずボカして放送するのが正解。

※祖母にして叔母にして妻にして第二妃の母 とは、再婚を繰り返すとそーいうことがあり得ます。アクエンアテン王は娘と結婚してますので、妻は「妻にして第二妃の母」。第二の部分は三でも四でも。
ツタンカーメンの王妃はツタンカーメンの死後、自身の祖父と結婚してますので、祖父アイとツタンカーメンの間に血縁関係があったとすれば「祖母にして異母姉にして妻」になります。ツタンカーメンの娘が生きて生まれて成長していて、ツタンカーメンと結婚していたら、ツタンカーメンの王妃アンケセナーメンは「祖母にして異母姉にして妻にして第二妃の母」になったかもしれません。まあこんな状態なので、家系図は諸説ありますよってことで。


●ツタンカーメンとアンメセナーメンの間に出来た娘二人についてのナレーション

「幼くして亡くなった」というナレーションでしたが、そもそも生きて生まれてませんぜ。未熟児と死産の子なのです。


●ツタンカーメンの棺に入っていたヤグルマギクの花輪… と放送していた

本体サイトで記事にした ツタンカーメンのヤグルマギク という記事参照。

映像で出ていたのは、オリーヴ、やなぎの葉、青ハス、矢車菊の花びらを織り成した花飾りです。ヤグルマギクオンリーではなく、他に色んなもの混じってます。しかも、花輪を作る専門の職業の人がいたので、王妃が作る必要はありませんでした。むしろじかに作った可能性は低い^^;
他の王様のミイラでも同じような花輪が見つかっているし、今回発掘されたKV63の映像の中にも花輪が山盛りにされてるシーンがあったじゃないか。あれだけ山盛りにされるほど量産されていたというのは、棺に納められていた花が特別なものなどではなかったことを意味しているわけですよ…。


●棺に塗られた黒い樹脂の説明が不自然

番組の方針的に、「この墓はアンケセナーメン王妃のもの!」→「王妃の棺が黒く塗りつぶされ、名前も消された!」→「悲劇の王妃」…という流れにしたかったんだろうけど、そんなもん名前消すだけなら名前のとこだけ塗るか削るかするし、存在を抹消したい人物ならアクエンアテンの墓がそうだったように埋葬品は徹底的に破壊して粉々にするのが普通かと…。

だいたい盗掘者が、狭くい暗い墓の中で、フタの裏から指の間まで丁寧にキッチリ樹脂塗りつけるとか、そんな面倒なことしないでしょ。ちょっと考えればわかりそうな話だし、番組内で、塗り方が綺麗すぎることを誰も指摘していないのが不自然。言及されているシーンがカットされてたのではないでしょうか。

ていうか、墓ではなく物置だった説に従うなら、黒く塗られた棺は作りかけ(樹脂は下ごしらえ)だった可能性も出てきます。名前は削られて隠されたのではなく、まだ刻まれていなかったかもしれない。出てきた名前は製作職人の名前かもしれない…


●アクエンアテンの治世中、宗教弾圧はそんなに厳しくなかった

一神教とは理想であって、結局そこまで厳しくできませんでした。現実は、今まであった神様すべて「それらはアテンの一面なんだよ」みたいなカンジで誤魔化しています。また、アクエンアテンの崇めたアテン神は愛と平和のマジカル太陽なので、従わなかった民衆を大量に処刑とかしてません。ていうか、してたという記録が見つかってたなら教えてくだされ。アクエンアテンの改革のイメージを大きく変えることになるんだから、それ自体が大発見だよ(笑)

王様は、ただ、それまでの都を捨ててド田舎に作った自分だけのドリームワールドに篭ってしまわれたのです…。
というわけで、映像の中にあった民衆の処刑シーンは物語作りすぎ。


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番組のオチ

・ミイラは無い
・棺とツボの中には枕とかミイラづくりの材料とか量産型副葬品が入ってる
・内視鏡で見えた鼻は何かの見間違い(笑)
・発見された遺物にアンケセナーメンの名前はない、王妃無関係の可能性大。

要約

すべては勘違い
タイトルはつけ間違い

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◆関連ブログエントリ

古代エジプト第18王朝のめくるめく近親相姦な家系図  〜夢と現実、その代償〜

アクエンアテンの宗教改革は何故実行できたのか。

アクエンアテンは革命者か狂信者か?

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